CONNECTING ARTIFACT つながるかたち展04開催
単純なかたちが一定のルールでつながり、全体を構成するという普遍的な原理を「個と群」と呼び、折紙工学者として知られる東京大学教授の舘知宏氏と、東京2020オリンピック・パラリンピックエンブレムのデザインでも知られる美術家の野老朝雄氏とが、多くの研究者たちと共に実践する創造プロセスの場「つながるかたち展」。この芸術・科学・産業を横断するアートイベントの第4回を、昨秋、初めて科学技術館で開催しました。子供たちが訪れる場で設定したコンセプトは、「触る」こと。来場者が作品に触れることで、思いがけない豊かな創造の場が実現しました。

「個と群」の原理から生まれた「かたち」
2024年10月5日(土)から27日(日)まで、科学技術館5階特設会場で「CONNECTING ARTIFACTS つながるかたち展04」が開催されました。
菱形や正三角形などの平面的なかたちから、立体構造の多面体に至るまで、かたちをつなげることで新しい構造や紋様が生まれます。このような原理を美術家の野老朝雄氏は「個と群」と呼び、それらは、自然の中や人工的な構造物、伝統的な工芸や遊びなど、私たちの身近な場所で応用されています。「つながるかたち展」は、東京大学の舘知宏研究室と野老氏が、「個と群」の創造プロセス実践作品の展覧会として2021年以降毎年開催しており、さまざまな場所で、かたちをつくることから始まる学術の連鎖を紹介してきました。

「触る」ことをコンセプトに
「つながるかたち展04」は「触る」ことがコンセプトに設定されました。その結果、つながるかたち展実行委員会の皆様より、当館内に数多く設置されているハンズオン展示物との親和性が高く、相乗効果のある取り組みになるのではないかとのご提案をいただき、当館での「つながるかたち展04」開催が実現しました。最終的に、国内外から40名以上の作家、研究室、開発者による作品が5階FORESTのイベントスペースにて展示され、会場の目玉として、触れる作品を集めた「わしゃわしゃゾーン」が誕生しました。
土日ともなると、当館には1日あたり千人以上の来館者が訪れます。そのため、安全性だけでなく耐久性も考慮しました。期間中も、来館者が作品に触れることで、制作者にとって新しい気づきが生まれ、何度も調整を重ねました。それはまさに「触る」コンセプトが生み出す最大の特徴であり、来館者と共に創り上げていく展覧会となりました。会場では、不思議でユニークな「つながるかたち」の魅力に、驚きや感嘆の声が聞こえ、開館から閉館まで熱気に溢れていました。
ドーム型のスクリーンに映像投影ができるシンラドームでは、映像作品による「“つながるかたちの内側” INSIDE CONNECTING ARTIFACTS」を複数回上映しました。私たち自身がミクロのサイズになってかたちの内側から眺めることで、つながるかたちの新しい面を覗き見ることができました。期間後半の日曜日には、展覧会に参加している作家によるワークショップも開催しました。どのワークショップも、作家本人から直接解説を聞き、実際に体験することで、「個と群」をより身近なものとして捉えている様子がうかがえました。
本展覧会は、科学技術と芸術の高い親和性を再認識し、当館としても新しい発見や意欲を掻き立てられる大変貴重な機会となりました。「つながるかたち展」は、これからますます注目度が高まり、今後の発展に目が離せません。今回だけでなく、この度“つながった”縁を大切にして、さまざまな科学技術館活用の“かたち”として、今後も何かしらのかたちで活動のご協力ができれば嬉しく思います。
〈科学技術館運営部 蔵居 悠〉