特別展 GUNDAM NEXT FUTURE SCIENCE 展 開催
TVアニメーション『機動戦士ガンダム』が初放送されたのは1979 年のこと。未来を予見するような科学技術の設定や、単なる勧善懲悪では割り切れない人間・社会紛争描写は、子供だけでなく若者や大人までを虜にしました。さまざまな社会課題を抱える現在、この国民的アニメに描かれた科学技術を今一度見つめると、そこには未来の課題解決のヒントが多く内包されています。人口増加に伴い宇宙移民が始まった近未来、“宇宙世紀” の技術は現代にどのように生かしうるのか ― 科学技術館では、こうしたガンダムの世界観の中にある未来の科学技術を見据えた特別展を、2024年10月3日(木)から22 日(火)まで開催し、大きな反響を呼びました。今号の特集では、この大規模特別展を振り返ります。

Ⓒ創通・サンライズ
ガンダムから社会課題を解決する科学技術を考える
2024年10月3日(木)から10月22日(火)までの20日間、科学技術館1階イベントホールと2階イベントスペースにて、特別展「GUNDAM NEXT FUTURE SCIENCE 展~未来の豊かな暮らしのために~」を当財団・当館主催で開催しました。未来の豊かな暮らしに向けて、現在世界で起こっているさまざまな社会課題に対して、『機動戦士ガンダム』の世界観を科学目線で切り出し、最新の科学技術展示を通して、来場者に課題解決のためのきっかけを伝えることを目的とした大型イベントで、子供から大人まで幅広い世代の多くのお客様に来場いただきました。
現在、安全で安心できる豊かな未来(生活)に向けて、「地球で暮らし続けるための技術の開発」と「宇宙で暮らすための科学技術の開発」が、日本のさまざまな企業や教育研究機関で進められています。展示では、宇宙で快適に暮らすための技術や、生活を豊かにする操縦ロボットの技術などを紹介しました。
宇宙で快適に暮らすためには、食料や居住空間が不可欠となります。将来、宇宙にたくさんの人が住むには、その現地での生産が必要となります。宇宙で農業をするための技術としては、ガンダムの中では武器として使用している「ビーム・サーベル」から着想されるプラズマがあります。このプラズマを活用して宇宙農業の実現を目指している技術は私自身とても興味深い展示でした。
横浜ガンダムのハンドや4足歩行ロボットの操作体験なども

Ⓒ創通・サンライズ
ロボットの操作体験では、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」で2024年3月まで実際に展示されていた、高さ18mの実物大の動くガンダムの一部「ハンド」を展示しました。この展示では、来場者が実際にコントローラーを操作してハンドを動かし、じゃんけんを体験できました。
他にも、アーム付き小型ロボット「BALGOI」の操作体験ができるコーナーなどがあり、どの操作体験も期間中はほぼ定員に達するほど人気となっていました。
また、10月12日(土)から14日(月・祝)までの3連休限定で、4人乗りの4足歩行型ライド「SR-02」を展示しました。このロボットは、実際に搭乗してその動きを体験することができるため、各回定員8名の中、150人近くの抽選となる回があるほど人気となっていました。実際に搭乗体験した方からも、大変多くの喜びの声をいただきました。さらに、ロボットの操作・搭乗体験をした方でだけでなく、周りでロボットの動きを一生懸命見ている方も多くいるなど、来場者の関心を集めていました。
特別講座やワークショップ、スタンプラリーも大好評
他にも、土・日・祝日限定で開催した「ガンダムオープンイノベーションサイエンス講座」、ガンプラワークショップ「ガンダムR(リサイクル)作戦」、「館内スタンプラリー」も大変多くの来場者に参加いただきました。
「ガンダムオープンイノベーションサイエンス講座」では、どの講座も大変魅力のある内容となっており、たくさんのお客様が開始30分以上前から並ばれ、熱心に話を聞かれていたのは非常に印象的でした。「ガンダムR作戦」では、ガンプラのランナー(枠)をリサイクルして生産したプラモデル「エコプラ」の組立体験をしていただきました。親御さんがお子さんに熱心に説明しながら組み立てているご家族や、お友達と楽しそうに組み立てている子供たちなど、微笑ましい場面が多く見受けられました。また、ご自宅から多くのランナーを持参してリサイクル用の回収ボックスに入れている参加者もいらっしゃいました。
「スタンプラリー」では、科学技術館の2階から5階までさまざまな箇所にスタンプ台を設置して、館全体を回ってもらいました。スタンプをコンプリートした方にはノベルティを進呈しましたが、それを台紙と一緒にとても丁寧にバッグにしまう姿も見られました。また、このスタンプラリーをきっかけに今回初めて展示棟の常設展示を見学された参加者からは、「常設展示も面白い」「1日で回りきれなかったからまた来たい」などの声をいただきました。
同展の開催中、毎週末に来館されている方や、年間パスポートを購入したという方もいらっしゃいました。アンケートでは、「またやってほしい」「巡回展として全国でやってほしい」などの声もいただきました。今後も「科学技術×エンターテインメント」という視点で新たな企画を展開し、社会全体の課題解決に寄与していきたいと思います。
〈総務室 八木 博之〉