多世代交流ミュージアム~「科学」を通じた、豊かな知と心の橋渡し(抜粋)

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科学技術館は、館スタッフ“だけ” が運営する小中学生向け“だけ” の科学館ではありません。実際は、運営にあたって実に幅広い世代の人々が関わっており、また、対象においても、小さな子供からシニア・大人世代までが参加できるさまざまなイベントを設けています。家族以外ではふだんは触れ合う機会の少ない世代同士が、「科学」を通じて交流し、豊かな経験を育む場にもなっている科学技術館。今号は、こうした「多世代交流」の場としての当館の姿をご紹介します。

科学技術館「サイエンス友の会」での「ディレクトフォース」による教室の様子。同団体は、“社会に役立ち、生きがいを感じる” 社会貢献を目的として企業経営の経験者や官界出身のメンバーで構成されたシニア組織。理科実験グループでは、専門性を生かした豊富なプログラムを多く開発しており、教室参加者の満足度も高い。写真の滑車プログラムもその一つ

 近年、「多世代交流」というキーワードが、自治体や地域コミュニティなど公共の場で注目されています。一般的には、家族・親戚以外ではふだんはあまり関わることのないシニア世代と子供たちが特別な場を設けて交流することを指し、子供たちは新しい知恵や社会経験を、親世代は貴重な教育アドバイスを得ることができ、シニア世代にとっても豊かな経験と専門知識を生かした社会貢献が実現できることから、社会全体のベネフィットにつながる価値創造の場とされています。 科学技術館もまた、「科学」を通じた“ 知恵の橋渡し” を行う「多世代交流」の場としての役割を担ってきました。特に当館の友の会などにおいて、長年にわたりさまざまな科学教育に関わる団体に協力をいただき、成果を生んでいます。

「サイエンス友の会」でのシニア・大人世代の活躍

 「サイエンス友の会」(現・サイエンス友の会 科学技術館ファミリー、以下友の会)は発足以来60 年余り、子供たちの心に科学への興味を生み、将来の日本の科学技術を担う人材を育てていきたい、という理念の下に活動してきました。これまでに、たくさんの専門分野の先生やボランティア団体、NPO法人の方々がこの理念に賛同くださり、個人やグループで科学イベントを開いてくださっています。 イベントの講師の中には、子供たちにとってのお祖父さん、お祖母さんほど年の離れたシニア世代の方々がいます。教育者や研究者、企業や団体の仕事を終えて第二の人生の一つとして活動されている方々のグループで、現在、「一般社団法人ディレクトフォース」、「自然科学に親しむ会(SPC)」、さらには、大学生からシニア世代までのメンバーで構成される「NPO 法人科学実験教室サポーター・くじら」といったグループがあります。


「ディレクトフォース」による飛行機をテーマにした理科実験プログラムの様子。工夫を凝らした実験工作体験で、丁寧に子供たちにアドバイスをする教育支援本部 理科実験グループの神永剛さん

お互いに大きな影響を及ぼしあう有意義な時間

 友の会イベントでは最も年の離れた世代同士の交流の場となるわけですが、講師の長年培われた豊富な知識をもって、子供たちの好奇心に優しくわかりやすい言葉でアプローチしている様子は、この交流ならではの教育成果につながるものではないかと感じます。また、かつて企業や教育・研究機関などで商品開発研究に携わった方からの、実生活と科学の関わりについての解説に、子供たちは目を輝かせています。 一方、講師からは、子供たちとのやりとりや反応から、解説方法の改善、新しいイベント開発などについて活発にやりとりをすることが、励みになり楽しいという声を聞きます。この広い世代の交流は、お互いに、これからにつながる大きな影響を及ぼしあう有意義な時間であることに違いありません。 
                              〈科学技術館運営部 高橋 葉子〉

※この項目の続きは、本誌PDFよりご覧ください。