新展示室「 フューチャー〈 クオンタム ワールド 〉」オープン 

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2025年2月17日(月)、科学技術館5階に量子技術が実現する未来社会をテーマとした新展示室「フューチャー〈クオンタム ワールド〉」が誕生しました。さまざまな展示を通じて、量子技術の原理を学んだり、量子技術が浸透した未来を体験したりできます。

科学技術館スタッフのデザインによる展示「量子技術がつくる未来」。スコープを覗くと、金融機関・交通・病院・創薬・運輸・発電所など量子技術がつくる未来社会の様子を動画で見ることができる

「量子ネイティブ」たちに未来の姿を届ける

 2025 年2 月17 日(月)、科学技術館5 階に新しく、「フューチャー 〈クオンタム ワールド〉」が誕生しました。量子技術が実現する未来社会について紹介する展示室です。

 日本をはじめ世界各国で、量子技術は重要施策と位置付けられ、さまざまな取り組みや戦略があります。量子技術を社会経済システム全体に取り込み、従来の技術システムと融合させることによって、産業の成長機会の創出や社会課題の解決に繋げることが企図されているものです。

 そんな量子情報を理解して使いこなせる人材は、「量子ネイティブ」と呼ばれます。科学技術館の来館者の子どもたちの多くは、量子ネイティブとなることが期待され、あるいはその直前世代にあたると考えられます。量子技術の原理はミクロな世界のものであり、直感的に分かりづらいものですが、その原理や現象、また近未来の活用例を具体的に可視化して展示することで、近い将来の量子ネイティブが簡単に目にすることができるようにという想いも込めた展示室として、「フューチャー」と名付けました。

科学技術館5階C室に登場した同展示室には連日多くの来館者が。「量子の世界」が実現する「未来」社会について概観できる

「量子コンピュータ」の特徴や原理を伝える展示

 現代社会のさまざまな事柄はデータとして扱われ、その多くがコンピュータで処理、すなわち計算されています。しかしながら、データの数に対して計算の量が多すぎると、現在のコンピュータでは処理しきれないということになります。「巡回セールスマン問題」「ナップサック問題」「スケジューリング問題」などとして知られる種類の問題は、規模が大きくなると計算時間が爆発的に増加するため、量子力学の原理を計算に利用して高速に最適の答えを導き出そうという新しい考え方のコンピュータ「量子コンピュータ」の開発が進められています。新しい考え方のコンピュータがこれらの組合せ最適化問題を得意にしていることを、光を使ったコンピュータLASOLV® の原寸モックアップや、組合せ最適化に関する映像や体験シミュレーションで紹介しています。

 また、光は粒子性も波動性も併せ持っているという量子力学に至る重要な原理としての「光電効果実験」と「ヤングの干渉実験」の体験や、典型的には「0」と「1」であらわされるビットと量子ビットの概念の違いや「0」「1」の重ね合わせを用いた計算の体験を、展示物として制作しました。

量子技術が実現する未来を覗く映像体験も

 加えて、量子力学や重ね合わせの原理の概要とともに、量子技術がつくるものとして期待される交通・病院・発電所・工場などの未来像について、未来都市ジオラマを覗くスコープによる映像体験で紹介しています。 

 映像や展示室内の記念写真撮影スポット、またアンケートロボットには、ネコ型ロボット「エルヴィン」を登場させ、少しでも量子の世界に馴染んでいただくことを目指しました。なお、子どもたちにとって量子技術への入口となることがこの展示室の目的であるため、室内の表現や用語も子ども向けとしました。具体的には、専門家が「組合せ最適化」「コンピュータ」のように用いる語を、展示室内では小学校で見る表現である「組み合わせ最適化」「コンピューター」のようにしています。

 本展示室の整備にあたっては、「量子技術が実現する未来社会を学ぶことができる展示室の整備事業」として、「量子技術がつくる未来」ゾーンについて、一般財団法人日本宝くじ協会の令和6 年度公益法人等が行う公益事業への助成を受けました。また、日本電信電話株式会社(NTT)から、展示室の意匠も含むさまざまな協力を得ました。末筆ながら御礼申し上げます。

〈科学技術館運営部 松浦 匡〉