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コンセプト

 日本科学技術振興財団/科学技術館は、これまで科学技術館の活動等を通して家庭と産業界を繋ぐ架け橋としての役割を果たしてきました。とくに開館以来の50年間は、科学と産業技術の成果が私たちのくらしに拡がっていく大事な時代でした。50/55周年を機に実施する「ニッポンの産業技術50年」を通して、これからの科学・技術・産業と人との在るべき関係と姿を考え、さまざまな立場の人々との対話の中から未来を「つくる」一助となりたいと考えています。


シンボルマークとキャッチフレーズ


「科学技術館50周年」と「ニッポンの産業技術50年」コンセプト

 東京オリンピックが開催された1964年、高度経済成長の真っただ中のこの年に科学技術館は開館しました。東京オリンピックは、初めて通信衛星により全世界にカラーテレビ中継され、世界のひとびとは敗戦から奇跡の復興を遂げた日本を再認識したのです。
その前後を振り返ってみますと、わが国の経済規模は、産業の「技術革新」と「量的拡大」により、みるみるうちに伸張していく一方で、家庭にあっても所得は順調に増えていきました。科学の成果が技術の進化を促し、技術の進化が新たな科学の成果を生むという好循環が続いて、日本経済を構成するあらゆる立場で、おしなべて高度成長の恩恵を受けていたといえるでしょう。


 科学と技術について、20世紀末の1999年に開催された世界科学会議では「ブダペスト宣言」として、「科学的知識は、人類にとってきわめて有益な目覚しい変革をもたらした。人々の平均寿命は飛躍的に伸び、多くの疾病に対する治癒の方法が発見された。農業生産についても、世界のいたるところで増加を続ける人口の需要に応えるべく、目覚ましい発展を見せてきた。技術開発と新エネルギーの利用は、人々が過酷な労働から解放される機会を創りだしただけでなく、工業生産や生産過程に、大きくかつ複雑な広がりをもたせることを可能とした。またコミュニケーションや情報処理あるいはコンピュータの新しい技術も、科学の営みや社会全体にとって前例のないほどの機会と可能性とをもたらしてくれた。宇宙や生命の起源、はたらき、進化などに関する着実な知識の進歩は、人類に対してその行動や思考に多大な影響を及ぼす抽象的かつ具体的な手段を提供してくれているのである。」と述べています。もちろん、科学と技術の進歩は「その明らかな恩恵だけでなく環境劣化や技術災害も同時にもたらし、さらに社会的な不公平や疎外も助長した」ことを忘れてはなりません。しかし、それらの負のアウトプットは新たな科学と技術の知見により克服されるべきものといえます。(括弧内は、「ブダペスト宣言」から引用)


 このように、科学技術館の50年は20世紀後半にあって「物理学」と「化学」を中心に科学と産業技術の成果が社会で花開いた時期とほぼ一致しています。また科学技術館は、主として青少年、学校団体、親子・家族連れを対象に、体験型の展示・演示手法を用いて、科学技術・産業技術の振興に繋がる情報や知識の普及啓発活動を展開し、「家庭と産業界の架け橋」となるべく活動してきました。
 そこで、科学技術館50周年を記念するイベントとして、私たちは家庭と産業界とを繋ぐ「ニッポンの産業技術50年」を取り上げることとしたものです。


 家庭や社会において科学・産業技術は私たちの暮らしを便利にそして豊かにしてきました。いわゆる「三種の神器」、「3C」、「新・三種の神器」はその代表例です。
私たちの周囲にあるこれらの製品・サービスはますます高度化して、いまや私たちはそれに含まれている科学や技術を日常意識することなく享受できるほど当たり前の存在となっています。逆説的ですが、私たちが無意識のうちに科学・産業技術を応用した製品・サービスを使えるのは、外から中身がわからなくてもよい「ブラックボックス」と化しているからでもあります。科学・産業技術の恩恵に与りながら、それらとは距離を置くようになっています。


 ひとびとの生活・行動パターンを短期間に大きく変えてしまう一連の活動を「イノベーション」といいますが、そのイノベーションにとって科学・産業技術の進歩が必要な要素であるならば、利用者との距離が空くという現在の状況は望ましくありません。そのことはこれまでのイノベーションのほとんどが、利用者ではなく供給側からの発案によっていたことの限界かもしれません。

 「ニッポンの産業技術50年」では、高度経済成長時代からの数々の工業製品、とくに家電品、自動車という民生品の実機の展示に加えて、さまざまな産業界における開発・技術者の回想、またモノのつくり手と来館者との対話などを通して、今日の日本を形づくっている、科学・産業技術の進歩を顧みていきます。


 科学・産業技術によって私たちのライフスタイルは、50年間にどのように変わってきたのか、そのビフォー・アフターを明らかにすることで、来館者である子どもたち、保護者の方たち、そのほか一般の皆さまに、次の50年は現実的ではないとしても、今後の10年20年を考えるきっかけになればこの上ありません。
この記念イベントには、科学技術館に出展していただいている電機、自動車、電力、鉄鋼、建設などの業界団体はもとより、さまざまな産業界、研究機関などからの参加を得たいと考えています。そこでは今後の私たちにとって、また産業界・研究機関、行政などいずれの主体にとっても、「健康」、「安心」、「心の豊かさ」、「サステナビリティ」は重要なキーワードであり、これを包含した「未来」、「イノベーション」が、参加者によって語られることを期待しています。


 50年前と現在とでは、未来予測が大きく変わっています。現在、一番に求められていることは、「未来がどうなるか?」ではなく、「未来をどう創るか!」であると思います。ここで待望されるのは、来館者からの自由なニーズの発想です。まさしく「必要は発明の母」にほかなりません。このことにより一方通行になりがちであった「家庭と産業界の架け橋」が双方向に遷移できるのではないでしょうか。

 この試みを成功させるために、皆さまのご協力・ご支援をお願いいたします。


2014年8月
公益財団法人日本科学技術振興財団/科学技術館