自然と友だち


思いがけない不思議との出会い

 暑中お見舞い申し上げます。8月は思いもかけないこととの出会いで、解説文の長い題材を取り上げることになりました。私たちの身の回りでこんなことが起こっているんだということの一例としてご覧ください。


撮影・解説:加納巌

加納さんに質問やメッセージをどうぞ。
http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/



 

夏の花 アゲハヒメバチの寄生 ヤブカンゾウとノカンゾウ 廃屋内のオオムラサキ 花に挟まれるアゲハチョウの実験
夏の花 アゲハヒメバチの寄生 ヤブカンゾウとノカンゾウ 廃屋内のオオムラサキ 花に挟まれるアゲハチョウの実験
ハマキフクログモ ネジバナ カタツムリの“濃厚接触” 蜂とカマキリの生と死を見る 幼虫の蛹化
ハマキフクログモ ネジバナ ウズグモの巣 蜂とカマキリの生と死を見る 幼虫の蛹化



 





【夏の花】
2020.8.10
梅雨の後、一転して猛暑、夏の花が暑さに負けじと、精一杯咲いています。
①太陽の花ヒマワリ、②三色のムクゲ、③千日紅は名に違わず紅のフリルを、④華やかな大輪の百合の集まりの元では,⑤優しい花姿のオニユリがうつむき、⑥アサガオは涼しげに咲いています。


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【アゲハヒメバチの寄生】
2020.7.13
アゲハチョウの飼育をしており、現在蛹が50個ほどあり、まもなく羽化が始まります。
ところが羽化する前にアゲハヒメバチに寄生され蝶になれない蛹がすでに5個あります。
そこで注意して見ていたら、蛹を内側から食い破り蜂が出てくるところを目撃しましたので、その一部始終を写真に撮りました。


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【ヤブカンゾウとノカンゾウ】
2020.7.19
道ばたや土手の草むらに、濃いオレンジ色のカンゾウの花が咲く頃になりましたが、目にするのはほとんどヤブカンゾウで、ノカンゾウを見るのは至難という状況です。昔はノカンゾウも沢山見ることが出来ましたが、ヤブカンゾウの方が遺伝子的に優勢なのかノカンゾウは絶滅状態です。昨年知人からの連絡で一株のノカンゾウを見つけることが出来、大事に掘って鉢植えにしておいたところ、今年は株も増えて花も咲きました。
 ヤブカンゾウは花が八重に咲きますが、ノカンゾウの花は一重で花姿が清楚です。大切に育て、増えたら野に移植したいと考えています。


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【廃屋内のオオムラサキ】
2020.7.20
今年も、小横の廃屋内でオオムラサキを見ることが出来ました。すでに人が住まなくなって30年余、木造の壁や戸は壊れ、かろうじてガラス戸の残っている部屋の中に、何故オオムラサキがいるのか判りませんが、今から15年ほど前に偶然此処を訪れたとき、汚れたガラス戸にオオムラサキがいるのを発見し、以後毎年訪れて確認し写真を撮ってきました。不思議なので蝶の専門家の方に連絡し案内をして調べてもらいましたが、廃屋の周りにはオオムラサキの食草となるエノキは見当たらず、幼虫がどこで育ち蝶となってこの部屋の中にいるのか全く判らず、部屋の中には壊れて朽ちかけた家具や、破れた布団が放置されているほか植物や水もなく、狸やハクビシンなどが住み、その獣糞などがあるだけです。なのに何故外ではなく壊れた建物の中にいるのか不思議です。最近は建物の中にいるオオムラサキの数が2〜3頭と少なくなり、観察していると建物の周りを舞う姿を数頭見るようになりましたが、今年も今日2頭を室内で見、写真を撮ったほか、庭にいる1頭を見ることが出来ました。これがいつまで続くのか判りませんが、体の許す限り続けて行きたいと思います。


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【花に挟まれるアゲハチョウの実験】
2020.7.22
7月16日に『花に挟まれて死んだアゲハチョウ』として、サン・パラソルの花に、吸蜜中のアゲハチョウが挟まれて死んでいると云って、その写真を東京にいる妹から送られてきましたが、そんな事はあり得ないので、この花に毒があってその毒に犯されて仮死状態になり、閉じる花に挟まれたのだろうと推測し、実験してみようと思い花を探しましたが、寒さに弱い花で信州では栽培出来ないので扱かっていないと断わられ諦め、妹に連絡したところ、実験のためにと東京から花を宅配で贈ってくれました。
 この日早速実験してみることにしました。
 午後1時30分、実験開始。花の咲いている赤と白の鉢をネット内に置き、その中に飼育中のアゲハチョウ(キアゲハとナミアゲハ)10頭を入れ様子を見ました。大輪で綺麗な花なので早速アゲハチョウは花に寄ってきて口吻を伸ばして吸蜜を始めましたが何故かすぐに吸蜜するのを止めて花から離れます。そのうちに花の中に頭を突っ込んで吸蜜する蝶が現れ、この蝶は花から離れずにじっとしています。白と赤の花に頭を突っ込んだ2頭の蝶は10分経っても花に止まったまま動きません。想像していた通り花の毒に犯されて動けなくなったようです。観察は続けました。1時間23分、白い花で吸蜜していたナミアゲハが床に落ちてそのまま動きません。
 午後6時、実験を始めてから4時間30分経過、その間に口吻を伸ばして吸蜜したたあと動きが緩慢になった蝶2頭、吸蜜をして花から床に落ちた蝶1頭、花の中に頭を突っ込んで動けなくなった蝶2頭と、10頭の内5頭までが花(サン・パラソル)の毒(オレアンドリン)に犯され異常を来した事が立証されました。しかも吸蜜という極く短時間の間に仮死態状態になるほどこの花の毒性は強いように思われます。サン・パラソルはキョウチクトウ科というグループの植物です。有毒な植物ですので、むやみに触ったりせず、口に入れたりするのは絶対にやめましょう。
以下、沢山撮影した写真の中から経過的に一部を選んでご覧頂きます。
←実験に使用したサン・パラソルの鉢植え
花に止まり吸蜜しようとするアゲハチョウ
頭を突っ込み動けなくなったアゲハチョウ
白い花でも同じ事が生じていました 吸蜜中花から落ちたアゲハチョウ
実験中に感じたことは、蝶は吸蜜の際この花の中に口吻を伸ばして吸蜜しようとしますが、細い漏斗状の花形から蜜の出る一番奥まで届きにくいので、あえて花の中に頭を突っ込んで吸蜜をするようになり、花の毒に犯され動きが緩慢になり抜け出せなくなるのではないかとも考えました。そこで花をカミソリで開いて見ました。多くの花はオシベ、メシベを外にはみ出させて昆虫の花粉媒介を促すようにしていますが、この花の場合写真で見るように花の奥に極く短かく出ているだけです。小さな昆虫は自由に出入り出来ますが、蝶の場合一旦花の中に頭を突っ込んでしまうと抜け出しにくくなるようです。蝶にしてはこの花は毒ばかりで無く花の形からも「危険花」といえそうです。
口吻を伸ばすも奥に届かず


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【ハマキフクログモ】
2020.7.30
ススキの葉を巻いて巣作りをしているハマキフクログモを見かけました。このクモは独特な生態を持っており、メスが巣を作るとオスが巣を破って中に入り交尾、オスは外に出て行きメスは中に残り産卵、卵から孵化した幼虫はメス(母親)の体を食べて成長します。子供のために我が身を提供するクモなので、巣の中を点検することとしました。まだ卵は孵化しておらず、中にいたメスグモは分解するピンセットの先に噛みついてきました。
 撮影の後、そっとしておいたら、分解した巣をすぐに補修しました。


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【ネジバナ】
2020.7.30
雨上がり、公園の水辺にネジバナが数本咲いていましたので写真に撮りました。花をアップで撮ると、白くブヨブヨとした下弁が奇異に見られました。


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【ウズグモの巣】
2020.8.6
薄暗い草むらに、直径2センチ程の白く浮かぶクモの巣らしきものを見かけたので、写真に撮って拡大してみたら、うず巻き状の裏側にクモがいるのが見られました。うず巻状の周りには更に直径20センチほどのネットが綺麗に張られていました。初めて見るクモの巣なので図鑑で調べたら「カタハリウズグモ」の巣と判りました。うず巻き状の隠れ帯が名前の由来のようです。


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【蜂とカマキリの生と死を見る】
2020.8.8
庭のダリアの花の上に、子カマキリが乗っているのを見て写真を撮っていたら、フタモンアシナガバチがやって来てカマキリの背中に止まりました。カマキリは鎌を振り上げ防御、一瞬2匹はもつれ合いましたがすぐに離れました。戦いはこれまでかと思いましたが、30秒ほどして蜂は再びカマキリの背後から近寄り、尻の部分を囓り始めました。カマキリはちらっと振り向いただけで動きません。察するに最初のもつれ合いで、蜂はカマキリを刺しその毒でカマキリは動けなくなったと思われます。蜂はカマキリの尻の部分を食いちぎりそれを咥えると舞い立ちすぐ横の葉の上に止まり、咥えた肉片を団子状に丸めて飛び去っていきました。尻を食いちぎられたカマキリは、そのまま動きませんでした。
 2時間ほど後に見たら、子カマキリは花から下の葉の上に落ち、早くも小さな蟻たちが集まってきていました。棒で触ったらカマキリはまだ生きていて鎌を少し持ち上げましたが、起き上がる元気はありませんでした。自然界の一隅で、小さな生きものたちの生と死のドラマが繰り広げられているのを偶然見ることになり、写真に撮ることが出来ました。


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【幼虫の蛹化】
2020.8.8
山道で見かけた、変わっ形をした幼虫や派手な色をした毛虫を捕らえて来てネット内で飼育していましたが、いずれも幼虫から蛹になりました。無事羽化してどんな成虫になるか、期待と楽しみです。
①今年大発生のマイマイガ
②マメドクガ
③フクラスズメ
④アケビコノハ


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