自然と友だち


自然の生き物の不思議な生態を見る

 秋の深まりゆく信州では、戸外で昆虫の姿を見る機会が少なくなりました。そんな中で、ふと目にした不思議な昆虫の行動をご報告いたします。驚きと感動の一場面です。


撮影・解説:加納巌

加納さんに質問やメッセージをどうぞ。
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ジョロウグモのオスとメス ナナフシとツユムシ 小さな生き物たちの生と死 蝶の変身 マムシグサの実を咥えたジョウビタキ
ジョロウグモのオスとメス ナナフシとツユムシ 小さな生き物たちの生と死 蝶の変身 マムシグサの実を咥えたジョウビタキ
山から里への赤い実 錦秋の彩り 通称「ユキムシ」 山から里への赤い実
山から里への赤い実 錦秋の彩り 通称「ユキムシ」 黒いキアゲハの幼虫



 





自然の生き物の不思議な生態を見る


【ジョロウグモのオスとメス】
2015.10.15
 不思議とジョロウグモの巣にはオスとメスが同居しているのをよく見かけます。メスは大きくオスは極く小さく、網を張ったり獲物を捕らえるのはメスで、オスは終始網の上部でじっとしている姿がよく見受けられます。オスは食事はどうするのかと注意して見ていたら、メスの食べ残しを食べているような場面を目にしましたが、間近でよく観察すると、どうやらメスが食事をしている最中メスに近づき、メスの腹の下に入り込み、メスのお腹の部分に口を当て刺激を与えることで養分を出してもらい、それを吸収しているように見受けられます。メスが食べるのを止めますと、オスはいち早くメスから離れます。オスはメスの体から分泌される養分で成長していくように見られます。目測とマクロレンズを使っての観測ですので真偽の程はわかりませんが、そう見られます。
上がオス、下がメス
 それから2時間後、新たな事態を目にしました。それはオスがメスの食べている獲物を一緒に食べ始めたのです。オスの食事がメスからの貰いものだけでなく、自らもメスが捕らえて食べている獲物を、メスと一緒に食べることを確認したのです。注意して見ていると、オスがメスに近づくときには、必ず体を震わせ、網を揺らす合図を送ってから近づくことも確認されました。
 それにしても、多くのジョロウグモの網にはオスが同居していますが、オスは何時どういう方法でメスの作った網に居着くようになったのか不思議です。こうしてみると、昆虫の世界では、通常我々が気づかない行動、習性が行われていることになり、興味は尽きません。折角ですので、今後この2匹が交尾するところが見られたらと注意深く観察をしていましたが、いつの間にかオスはいなくなり、メスだけとなってしまいました。そのメスも10月末には姿が見えなくなり、糸の張られた窓枠の端のほうに、ピンク色の卵のうと思われる2センチほどの塊があるのを発見しました。


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【ナナフシとツユムシ】
2015.10.17
 今朝の気温は9度と冷えを感じましたが、日中の陽差しは暖かさが感じられましたので近くの公園に散歩に出掛けました。偶然木の小枝にナナフシがいるのを見つけました。よほど注意しないと見過ごしてしまいますが、見つけたので早速カメラに収めました。長い触角が有るのでエダナナフシでした。また、草むらにはセスジツユムシが何匹かいて、これもカメラに収めました。これから寒くなり野外で昆虫を見られるのは少なくなってしまいます。


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【小さな生き物たちの生と死】
2015.10.22
 サンルームの窓に、ジョロウグモが網を張り、虫を捕らえたり、オスとメスが同居していて面白い行動をするのを観察していて、クモに関する興味と関心が深まり、今日は近くの公園に出掛け、木の枝などに網を張っている沢山のクモを見て回りました。
 そして、奇しくも一つの網にキイロスズメバチが掛かった瞬間を目にすることになりました。ハチが網に掛かった瞬間、クモは素早く獲物に近づき、いつものように毒液を注入し、糸を絡めようとしましたが、何故かクモはぱっと獲物のハチから飛び退きました。ハチは糸を破って飛び去りました。獲物がハチだったので刺されたのかと思い網の端まで逃げたクモを見たら、なんと後足一本を食いちぎられていました。刺されたのではなく糸を掛けようとして伸ばした足を、頑丈なハチの顎で根元から食いちぎられていたのです。クモは痛いのか、盛んに残った足で体を撫でていました。
 一瞬の出来事で、その瞬間を写真に撮ることが出来ませんでしたが、足を食いちぎられたクモの姿を写真に撮りました。
自然の生き物たちは、テリトリーを守るため、食べ物を得る為に常に危険にさらされていることは、これまでもいくつかの事例を見てきました。
庭でヒヨドリが餌場を巡り、同じヒヨドリと羽を散らしながら上になり下になって争い、勝った一羽が負けた一羽の上に乗っている様子。
カマキリは目の前に動く昆虫がいると、素早く鎌で捕らえて食べますが、このときは目の前に近づいてきたのがオオスズメバチでした。鎌で捕らえた瞬間ハチは逆にカマキリに噛みつきました。あの頑丈な顎で食い付かれ、カマキリはあえなく絶命。
ニホンミツバチの巣の入り口に近づいたオオスズメバチ、近くにいたミツバチチを食い殺しましたが、その直後、ミツバチの巣から沢山のミツバチが出てきて、あっという間にオオスズメバチを包囲、団子状になって一斉に翅を振るわて、熱を発しオオスズメバチを退治てしまいました。
秋の虫の声を聞きたいと、エンマコオロギとキリギリスを同じ籠の中に入れたのが間違い、コオロギは、キリギリスを襲って食べてしまいました。
カマキリの共食いは有名ですが、正面から出会うとお互いに翅を広げ威嚇し合いますが、どちらかが不利とわかるとさっと逃げます。交尾の場合もオスは決してメスの前から近づくことなく後ろからそっと近づいてメスの背に乗ります。
庭の藤蔓にウラギンシジミの幼虫がいるのを見て、蔓ごと取ってサンルーム内で飼っていたところ、ウラギンシジミの幼虫が蛹になろうとしてじっとしているところへ、同じ蔓の中にいたのか、キドクガの幼虫が近づいてきて、ウラギンシジミの幼虫を食べ始めるのを目にしました。同じ食草を食べる幼虫には、体内に同じ養分が蓄積されているので、食べるものが少ないときには、同じ種類の幼虫との共食い、或いは他の種類の幼虫を食べる事があると聞いていましたが、実際にその場面を見るのは初めてで寒気がしました。


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【蝶の変身】
2015.10.24
 蝶は「完全変態」をする昆虫と言われ、卵→幼虫→蛹→成虫と成長過程で全く変わった姿になりますので、その成長過程を観察、記録するため卵からの飼育を行ってきました。
 今年もさまざまな生き物の成長過程を撮ってきましたが、今回ご紹介するのは7種類の蝶と1種類の蛾です。
種類 幼虫 成虫
キアゲハ
ジャコウアゲハ
クロアゲハ
オオムラサキ
アサギマダラ
ルリタテハ
ウラギンシジミ
ヤママユ(天蚕) 友達が、“庭の木にこんな虫がいた”からと持ってきてくれたのは、高価な緑の絹糸の繭をつくるヤママユの幼虫でした。大事に飼育しました。

( 繭)


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【マムシグサの実を咥えたジョウビタキ】
2015.10.27
 マムシグサの赤い実を咥えたジョウビタキの一瞬を、カメラで捉えることが出来ました。この後、ジョウビタキは大きな実を一気に飲み込んで飛び立ちました。


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【山から里への赤い実】
2015.10.28
 この日朝6時に起きたら、ルリタテハが1頭羽化していました、続いて隣の蛹も羽化の兆候が見えたので、カメラをセットし羽化の様子を撮影しました。
葉の落ちた枝先に、ナナカマドの赤い実が垂れ、アルプスの峰は初雪に見舞われる 林道沿いの山の斜面に、真っ赤な実を付けたカンボク
里山の平地に、夏は白い花を咲かせ、今は赤い実をたわわに付けるオオカメノキ 農道脇の暗い林の入り口に、ひときわ目をひくマムシグサの赤い実
庭囲いのイチイの枝に実った赤い実 玄関脇の枝に数個の果実を付けたザクロ、外皮が割けて中の赤い実がこぼれ落ちそうに秋の陽に光っている


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【錦秋の彩り】
2015.10.29
 10月も終わり、川島・横川峡の紅葉が見頃だというので出掛けました。穏やかな陽射しに、見頃を迎えていました。
 紅葉、黄葉の木々が、常緑樹の緑と混在して、谷の斜面を錦に彩る景観は見事で、逆光に透けて見える真っ赤なカエデ、黄色のカエデが見せる艶やかさ、林の中で木漏れ日を受けて、秋の彩りの仲間入りをしている、色づいた背丈の低い木々の葉に、秋の深まりを感じます。
 それにしても、これまで緑だった木々の葉が、或る木は赤に、或る木は黄に、一本の木でも伸びた枝ごとに、葉の一葉、一葉ごとに微妙な色変わりをして見せてくれるのは何故でしょう。自然の織りなす不思議な芸の細やかさに、唯々感歎するばかりです。
 車の乗り入れが禁止されている山道に足を踏み入れると、足元には一面に落ち葉が敷き詰められていました。
谷間の錦絵
逆光の木の葉
枝ごと、葉ごとに色が違うカエデ
林の中で、木漏れ日を受けて色づく木々
山路には、もう落ち葉が一杯積もっていました


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【通称「ユキムシ」】
2015.11.5
 晩秋の夕暮れ時、この虫が舞うと“間もなく雪が降る”と言い伝えられてきた、「ユキムシ」ですが、昆虫図鑑では見当たりません。今日庭先にこの虫がちらちら舞っていたので捕らえて黒い布の上に置き、写真を撮りました。大きさは3ミリほどと小さく、お尻に真っ白な綿毛を付けていて、翅は透明でふわふわと風に浮かぶように舞います。
 この後、早速写真仲間から、ユキムシについての記録の検索方法の連絡を受け、検索した結果次のことがわかりました。おおまかにまとめると、『ユキムシは、アブラムシのうち白腺物質を分泌するものの通称、アブラムシは普通翅がない姿で単位生殖するが、秋になって越冬する前に翅を持った成虫が生まれ、白いろう物質を身にまとって舞うようになり、その姿が雪を思わせ、飛ぶ力も弱いので、風にたなびいて流れるように舞うため一層雪を思わせることからこう呼ばれる。北海道では、雪の訪れを告げる風物詩、雪の妖精と言われている。正式の名前は「トドノネオオワタムシ」と言う』とありました。


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【黒いキアゲハの幼虫】
2015.11.10
 近くの家の方が、ニンジンの葉にいたからと、キアゲハの幼虫を5匹持ってきてくれました。終齢幼虫と思われますが、1匹だけ真っ黒な幼虫がいました。これまで沢山の幼虫をみてきましたが、こんな色の終齢幼虫を見るのは初めてですので、蛹化、羽化まで他と区別して見て参りたいと思います。


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