9月の北の丸公園を飾ってくれた草木の花や実の中から


「9月の北の丸公園を飾ってくれた草木の花や実の中から」

 イチョウの木に黄緑色の種が見られるようになりました。
 吉田茂像の植え込みには、朝は白い花を咲かせ、昼頃になると紅色に色を変えるスイフヨウという大きな八重の花が咲き始めました。
 草むらには、ネズミノオやカゼクサなどのイネ科の草や、カヤツリグサの仲間の草も姿を見せてくれています。ヒメムカシヨモギやオオアレチノギクなどのキク科の草に混じって、ノシランやタマスダレの白い花も見られ、秋の風情をかもしてくれています。
 いよいよ秋の到来です。涼風の中で草木の秋をお楽しみください。
撮影・解説:永井昭三

永井昭三先生にメッセージや質問などをお寄せください。
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<木の部>

イチョウの種 スイフヨウの花
イチョウの種 スイフヨウの花

<草の部>

ヒメムカシヨモギの花 オオアレチノギクの花 アレチノギクの花 ツルボの花
ヒメムカシヨモギの花 オオアレチノギクの花 アレチノギクの花 ツルボの花
ノシランの花 タマスダレの花 ススキの穂 ネズミノオの穂
ノシランの花 タマスダレの花 ススキの穂 ネズミノオの穂
カゼクサの穂 カヤツリグサの穂 チャガヤツリの穂 コゴメガヤツリの穂
カゼクサの穂 カヤツリグサの穂 チャガヤツリの穂 コゴメガヤツリの穂
ハマスゲの穂
ハマスゲの穂



 



<木の部>

イチョウの種  【イチョウ科】
イチョウの種  【イチョウ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 雄の木と雌の木があります(約30m)。花は、4月に雄の木と雌の木それぞれに雄花と雌花が咲きました。
 雌花は、緑色で花の柄の先に乳首(ちくび)のような小さな1対の種のもとになるもの(胚珠=はいしゅ)をつけていました。その胚珠が黄色い種に育って10月頃には落ちてきます。
 種は、外側に水気の多い浅い緑黄色の厚い皮(外種皮=がいしゅひ・かぶれる人がいるので要注意)がありますが、その内側にはかたくて淡い褐白色の皮(内種皮=ないしゅひ)があり、その中に膜のような薄い皮に包まれた胚乳(はいにゅう)と新しい芽や根になる胚(はい)が入っています。この胚乳は食べられます。

 

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スイフヨウの花  【アオイ科】
スイフヨウの花  【アオイ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 フヨウの花が八重咲きになった園芸種です(2~3m)。
 幹は真っ直ぐに立ち上がっていますが、下の方から枝をたくさん出しており、灰白色の毛でおおわれています。
 葉は、長い柄(9~12cm)で枝に互生していますが、葉の形は手のひら形(10~20cm)で3~7つの切れ込みがあり、縁には細かいギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。
 8~9月頃、枝先の葉の脇に、朝、八重咲きの白い花(花径7~10cm)を開きます。花は昼頃淡い桃色に変わり、夕方には紅色に変わって枯れます。
 花びらは、外側のものは大きく、内側のものはおしべの筒の部分に小さくなってついています。

 

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<草の部>

ヒメムカシヨモギの花  【キク科】
ヒメムカシヨモギの花  【キク科】
撮影日:2013年9月3日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 茎は真っ直ぐに伸び上がっており(1~1.5m)、細長く薄い葉を密に互生させています。茎にも葉にも荒い毛が生えているので、さわるとざらざらしています。
 8~10月頃、茎の上の方で枝分かれして、淡い緑色の小さな花のかたまり(頭花=とうか)を円すい状に柄の先にたくさんつけています。頭花の外側は、細くて小さな緑色の葉のようなもの(総苞=そうほう)に囲まれており、その内側には白い舌状の花びらが見られる花(舌状花=ぜつじょうか)が見えています。舌状花に囲まれて、内側には筒状の花(管状花=かんじょうか)がつまっています(管状花より舌状花の方が高く見えているのが特徴)。

 

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オオアレチノギクの花  【キク科】
オオアレチノギクの花  【キク科】
撮影日:2013年9月4日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 茎は真っ直ぐに伸び上がっており(1~1.5m)、ヒメムカシヨモギより厚い葉を互生させています。茎にも葉にも柔らかい毛が生えているので、肌(はだ)ざわりがよく気持ちよく感じます。
 8~10月頃、茎の上の方で枝分かれして、小さな花のかたまり(頭花=とうか)を円すい状にたくさんつけています。頭花はヒメムカシヨモギより大きく、舌状花が外から見えないところが違います(頭花はアレチノギクより小さい)。
 頭花は、3~4列に並んだ細い葉のようなもの(総苞=そうほう)に囲まれており、その内側に、舌状の部分が極めて短く澄んだ白色の舌状の花(舌状花=ぜつじょうか)が3~4列並び、その内側に筒状の花(管状花=かんじょうか)がかたまって見られます。花についている毛(冠毛=かんもう)は淡い褐色をしています。

 

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アレチノギクの花  【キク科】
アレチノギクの花  【キク科】
撮影日:2013年9月4日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 茎がある程度まで伸びるとその先に枝が数本伸び上がって、茎より高く枝を広げるようになります(30~60cm)。
 葉は細長い線形ですが、縁は波を打つようにウェーブしたり、中には荒いギザギザ(鋸歯=きょし)がある葉も見られます。茎にも葉にも灰白色の毛が密生しています。
 6~12月頃、先が平らな卵形の花のかたまり(頭花=とうか)を枝先に総状(そうじょう)にたくさん咲かせます。頭花は、細い柄の先についており、外側は細長い葉のようなもの(総苞=そうほう)に囲まれていて、その中に小さな花がつまっています。頭花のまん中の方には、毛(冠毛=かんもう)に囲まれた筒状の花(管状花=かんじょうか)がかたまってつまっており、周りには冠毛に囲まれた目立たない舌状の花(舌状花=ぜつじょうか)が見られます。

 

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ツルボの花  【ユリ科】
ツルボの花  【ユリ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 地中にラッキョウのような形の球根(鱗茎=りんけい・2~3cm)があります。
 葉は、細長い2枚の葉が向き合ってついていますが、葉の表面は樋(とい)のようにへこんでいます。春に出た葉は夏には枯れて、秋に再び出てきます(15~25cm)。
 8~9月頃、葉の間から伸び出た茎の先に、淡い紫色の花(花径約7mm)の集まり(総状花序)をつけます。花の柄は約4mm位で、花は下から上に向かって順に開いていきます。
 花には、平らに開いた花びら状のもの6枚(がくに当たる外花被が3枚と花びらに当たる内花被が3枚)・おしべ6本・めしべ1本が見られます。

 

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ノシランの花  【ユリ科】
ノシランの花  【ユリ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 根もとから肉厚のつやのある緑の葉をたくさん茂らせて、大きな株になっています(40~70cm)。
 8~9月頃、平らな花茎の先の方に白または淡い紫色の花が3~6花ずつ集まって、段々に分かれて下向きに開いています(総状花序)。
 花には、花筒の先に6枚の花びらのようなもの(がく=外花被3枚と花びら=内花被3枚)があり、その内側におしべ6本・めしべ1本が見えています。

 

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タマスダレの花  【ヒガンバナ科】
タマスダレの花  【ヒガンバナ科】
撮影日:2013年9月4日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 地中にある球根(鱗茎=りんけい)から、細長く厚みのある濃い緑色の葉をたくさん出して、簾(すだれ)を立てたように見えています(20~30cm)。
 8月の末頃から、たくさんの葉の間から伸び出した花茎の先に、1つだけ上向きの白い花を咲かせています。
 花には、短い花筒の先が6裂した花びら状のもの(がくに当たる外花被が3枚と花びらに当たる内花被が3枚)・おしべ6本・めしべ1本が見られます。
 花は、日陰では半開しますが、日向では全開します。

 

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ススキの穂  【イネ科】
ススキの穂  【イネ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 根もとからたくさんの茎を伸ばして大きな株をつくっています(1~2m)。
 葉は、茎の下の方を鞘(さや=葉鞘=ようしょう)で包んで、細長くかたい葉(幅1~2cm・長さ50~80cm)を伸ばしていますが、葉の真ん中には、太くて白いすじが見られます。葉の縁には、細かくかたいのこぎりのような歯があるので、ざらざらしていて、手を切ることがあります。
 8~10月頃、茎の先に10~25本の枝穂をつけた花穂(15~30cm)を出します。枝穂には、長い柄のある小穂(しょうすい・5~7mm)と短い柄のある小穂が対になってついており、小穂の下には淡い紫色の長い毛(7~12mm)が生えています。
 小穂には、実ができる花(小花=しょうか)と実ができない小花の2つの花が咲きます。

 

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ネズミノオの穂  【イネ科】
ネズミノオの穂  【イネ科】
撮影日:2013年9月3日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 細くて丈夫な茎が根もとからたくさん生え出して株をつくっています(40~80cm)。
 細い葉(幅は約5mm・長さは20~60cm)は中央の脈に沿って2つに折れ、縁は少し内の方に巻いています。なお縁には細かいのこぎりのようなギザギザが見られます。また、葉の鞘(さや=葉鞘=ようしょう)の口の部分には、葉舌(ようぜつ)といわれている短い毛の列が見られます。
 9~11月頃、茎の先に細長い灰色をおびた花穂(円すい花序・20~30cm)を出しています。花穂にはたくさんの枝穂が出ていて、枝穂には芒(のぎ)のない小さな穂(小穂=しょうすい・2~2.5mm)を密生していますが、枝穂は極めて短く、穂軸にぴったりくっついているので、全体が1本の穂のように見えています。
 小穂には、2mm程の花が1花咲きます。

 

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カゼクサの穂  【イネ科】
カゼクサの穂  【イネ科】
撮影日:2013年9月3日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 根もとから茎をたくさん出して、大きな株をつくっています(30~80cm)。
 葉(幅2~6mm・長さ20~40cm)の大部分が根もとから出ていますが、葉のもとの鞘(さや=葉鞘=ようしょう)は平らに見えています。葉鞘の口近くには、白く長い毛がたくさん生えています。
 8~10月頃、茎の先に真っ直ぐに伸び出ている花の穂(20~40cmの円すい花序)が見られます。穂は、たくさんの枝を横に広げ、小枝を分けて、細くてつやのある赤紫色の小さな穂(小穂=しょうすい・6~10mm)をたくさんつけています。
 小穂の中には、7花前後の花が咲きます。

 

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カヤツリグサの穂  【カヤツリグサ科】
カヤツリグサの穂  【カヤツリグサ科】
撮影日:2013年9月3日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 茎は切り口が三角形をした三角柱で、根もと近くに細長い葉(幅2~5mm)を2~3枚つけています。葉のもとは鞘(さや=葉鞘=ようしょう)になっていて茎を包んでいます。
 8~10月頃、茎の先に数枚の細長い葉のようなもの(苞葉=ほうよう)をつけ、その中央から4~10本の枝を伸ばして、花穂をつけています(20~50cm)。
 花穂には、黄色く細長い小穂(しょうすい・約1cm)がたくさんついています。小穂には、10~20個の花が2列に並んでついています。
 花には、がくも花びらもなく、鱗片(りんぺん)に包まれています。鱗片は、黄褐色で先は短く尖(とが)っています。

 

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チャガヤツリの穂  【カヤツリグサ科】
チャガヤツリの穂  【カヤツリグサ科】
撮影日:2013年9月3日  撮影場所:千代田区北の丸公園
 茎はカヤツリグサと同じように長い三角柱で、茎のもとの方には細長い葉(幅2~5mm)を2~3枚つけています。葉のもとは鞘(さや=葉鞘=ようしょう)になっていて茎を包んでいます。
 8~10月頃、茎の先に細長い葉のようなもの(苞葉を=ほうよう)を数枚つけて、その中央から長さの不ぞろいの枝を5~6本伸ばして、花穂をつけています(20~60cm)。
 花穂には、赤褐色で平たく細長い小穂(小穂・0.7~1.5cm)がたくさんついています。小穂には、8~20個の花が左右に2列に並んでついています。
 花には、がくも花びらもなく、鱗片(りんぺん)に包まれています。鱗片は赤味をおびた褐色で、尖(とが)った先が外側に反り返っているのが特徴です。

 

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コゴメガヤツリの穂  【カヤツリグサ科】
コゴメガヤツリの穂  【カヤツリグサ科】
撮影日:2013年9月1日  撮影場所: 千代田区北の丸公園
 三角に角張っている茎を根もとから数本出しています。葉は細く3列に互生していますが、葉のもとは鞘(さや=葉鞘=ようしょう)になって下の方を包んでいます。
 8~10月頃、茎の先に長い葉のようなもの(苞葉=ほうよう)を数枚つけて、その中央から4~10本の枝を出して、花穂をつけています(20~50cm)。
 花穂には、淡い緑褐色の小さい穂(小穂=しょうすい・0.5~1cm)がたくさんねじれたようについています。小穂には、米粒形の小さい花が2列に20個余り並んでいます。
 花には、がくや花びらはありませんが、淡い緑褐色で卵形の鱗片(りんぺん)に包まれています。

 

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ハマスゲの穂  【カヤツリグサ科】
ハマスゲの穂  【カヤツリグサ科】
撮影日:2013年9月6日  撮影場所: 千代田区北の丸公園
 地中にひいている地下茎から三角に角張っている茎を伸ばして群がって生えています。
 深緑色のつやのある細長い葉を2~3枚、茎の下の方から3列に互生しています。葉のもとは鞘(さや=葉鞘=ようしょう)になっていて、茎を包んでいます。 8~10月頃、茎の先に細長い葉のようなもの(苞葉=ほうよう)を2~3枚出して、その中央から長さの違う枝を数本出して、花穂をつけています(20~30cm)。
 花穂には、濃い茶褐色の細い小さな穂(小穂=しょうすい・約2cm)をまばらにつけています。小穂には、20数個の小さな花が2列に並んでいます。
 花には、がくや花びらはなく、長いだ円形で舟形の鱗片=りんぺん(中脈は緑だが両側は褐色)に包まれています。

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