1月の東御苑大芝生周辺に見られた木の花や実の中から


「1月の東御苑大芝生周辺に見られた木の花や実の中から」

 新しい年が明けました。今年も昨年に続いて東御苑の草木の推移を追いながら月初めの目立った姿を御紹介してまいります。
 天守台下にはニッポンタチバナやマルキンカンの黄色い実が、中雀門跡の植え込みにはヤブコウジやセンリョウ・マンリョウ・タラヨウなどの赤い実が、緑の泉や休憩所近くの大芝生縁にはミヤマシキミやクロガネモチの赤い実が寒空のもとで人目を引きました。あちこちの植え込みの縁に植えられているカンツバキは紅色の花を咲かせて、花の少ない御苑に華やぎを添えていました。

撮影・解説:永井昭三

永井昭三先生にメッセージや質問などをお寄せください。
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クチナシの実 マルキンカンの実 ニッポンタチバナの実 ミヤマシキミの実
クチナシの実 マルキンカンの実 ニッポンタチバナの実 ミヤマシキミの実
ヤブコウジの実 マンリョウの実 センリョウの実 タラヨウの実
ヤブコウジの実 マンリョウの実 センリョウの実 タラヨウの実
クロガネモチの実 ユズリハの実 ヤツデの花 カンツバキの花
クロガネモチの実 ユズリハの実 ヤツデの花 カンツバキの花



 





クチナシの実
<アカネ科>
クチナシの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:天守台脇の植え込み
 静岡県より西の暖かい地方の野山に生えている常緑の低木(1〜2m)です。庭や公園などにも植えられています。
 葉は、両端が細くなっただ円形(5〜12cm)で、少し厚く、表面はつやのある濃い緑色をしています。
 6〜7月の頃、よい匂いのする白い花(花径5〜7cm)を枝先に開いていましたが、冬の頃は、角ばった6本の縦すじが見られる黄赤色のだ円形の実が枝先になっています。実の先には、花の時の長細い緑色のがく片が見られます。実の中には、丸みのある黄赤色の薄く小さな種(3〜5mm)が90粒程入っています。この実は、染料や薬用に利用されています。
 名前は、実が実っても割れないところから、種の出る口がないという意味でつけられたといわれていますが、他にもいろいろ説があるようです。

 

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マルキンカンの実
<ミカン科>
マルキンカンの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:天守閣脇の植え込み
 中国生まれの常緑の低木(約1.5m)です。ふつうは庭や畑に栽培されています。
 茶褐色の縦すじがたくさん見られる幹には、枝・葉が密に茂っています。上向きに伸び出た緑の枝にも、角張ったすじが見られます。葉(4〜9cm)は、先のとがった長いだ円形で、表は緑色で裏は白緑色をしており、葉の縁には小形の浅いギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 初夏のころから、2〜3回、白い色の花(花径約1cm)を枝先の葉の脇に1〜2花ずつ咲かせます。秋から冬にかけては、球形の黄色い実(2〜4cm)がなっています。実の中には、袋が4〜5袋、白い色の種も4〜5粒見られます。実は柔らかく甘みがあります。
 名前は、中国名の「金橘」を音読みにしたもので、丸い金色のミカンという意味が含まれています。

 

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ニッポンタチバナの実
<ミカン科>
ニッポンタチバナの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:天守閣脇の植え込み
 愛知県より西の暖かい地方の海岸近くの野山に生えている常緑の小高木(2〜6m)です。
 幹にたくさんの枝を茂らせて、育ちはゆっくりしています。枝の切り口は、三角形に見えます。
 葉は、両端が次第に細くなっただ円形で、縁には浅いギザギザ(鋸歯=きょし)があり、葉の先には小さなくぼみが見られます。葉の脇には、小さな刺があります。
 6月頃、枝先の葉の脇に、1つずつ白い花が咲きますが、花の後には、先が平らな球形の実がなり、熟れると黄色くなります。実の中には、小さな袋が6〜8袋入っています。1つの袋の中には、白い種が1〜2粒あります。実は、苦くすっぱい味がします。
 名前は、この木を外国から初めて日本に持ってきた田道間守(たじまもり)という人の名前がもとになったといわれています。

 

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ミヤマシキミの実
<ミカン科>
ミヤマシキミの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:緑の泉裏の縁
 関東より西の暖かい地方の山の中の木かげに生えている常緑の低木(0.5〜1m)です。雄の木と雌の木があります。
 灰色の茎は真っ直ぐに立ちあがって枝を分けていますが、枝の先の方に、両端が細くとがった、だ円形の厚みのある葉(約10cm)が、輪生しているように互生しています。葉を透かして見ると透き通った粒々(油点=ゆてん)が見られます。
 4〜5月頃、よい匂いのする白い小さな花が、円すい状にたくさん咲いているのが見られました。秋から春にかけて、赤く熟した実(径約8mm)をつけています。お正月の飾りに使われることもありますが、有毒ですから食べてはいけません。
 名前は、葉の姿がシキミに似ていて、山奥に生える種類の木であることからつけられたものです。

 

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ヤブコウジの実
<ヤブコウジ科>
ヤブコウジの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:中雀門跡の植え込み
 日本各地の野山の木かげに生えている常緑で小形の低木(10〜20cm)です。観賞用に植えたり、盆栽にしたり、お正月の飾りとしてもよく使われています。
 茎は、1本立ちしており、茎の先の方に3〜4枚のつやのある厚い葉(4〜12cm)を1〜2層、輪生状に互生しています。葉の縁には、細かいギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 7〜8月頃、葉の脇に白い小さな花(花径6〜7mm)の集まり(2〜5花)を下向きに散形状に咲かせていました。秋から冬にかけては、赤く熟した球形の実(径6〜7mm)が下向きになっているのが見られます。実の中には、淡い褐色のすじが見られる種(5〜6mm)が1粒入っています。
 名前は、葉がミカンの葉に似ていることから、藪(やぶ)かげに生える柑子(こうじ=ミカンのこと)という意味でつけられたものです。

 

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マンリョウの実
<ヤブコウジ科>
マンリョウの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:中雀門跡の植え込み
 関東より西の暖かい地方の山の中に生えている、常緑で小形の低木(0.3〜1m)です。観賞用にも家内安全・商売繁盛の縁起を祝う意味からも、よく庭に植えられています。
 茎の上の方で枝を分けて、濃い緑色のつやのある厚い葉(4〜12cm)を互生させています。葉の縁には、波打つような感じのギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。
 7月頃、前の年に出た枝の先に、白い小さな花(花径約8mm)を10数花ずつ(散房状)咲かせていましたが、冬の間は、球形の赤い実(6〜7mm)を下向きにつけています。実の中には、縦すじの見える灰色をおびた黄色の種(5〜6mm)が1粒入っています。
 名前は、実の美しさを「値(あたい)千金」とほめたたえる意味でつけられたセンリョウという木を意識してつけられたものと考えられています。

 

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センリョウの実
<センリョウ科>
センリョウの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:中雀門跡の植え込み
 房総半島から西の暖かい地方の山に生えている常緑の小形の低木(50〜90cm)です。庭に植えて栽培し、正月の切り花としてよく利用されています。
 緑色の茎がたくさん伸び出して、上の方で枝を分けていますが、節がふくらんでいて、葉(6〜15cm)を対生させています。葉は少し厚くてつやがあり、先のとがった長いだ円形の葉の半ばより先の方には、あらいギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。
 6〜7月頃、枝先に2〜3本枝を分けた花の穂を出して、黄緑色の小さな花(がくも花びらもない)の集まり(複穂状花序)をつけていましたが、冬の頃は球形の赤い実(5〜8mm)を上向きにつけています。実の中には、淡い褐色のウズラの卵形の薄っぺらい種(約4mm)が1つ入っています。
 名前は、実の色が千両にも値するほど美しいという意味でつけられたものです。

 

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タラヨウの実
<モチノキ科>
タラヨウの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:中雀門跡の植え込み前の植え込み
 静岡県より西の暖かい地方の山々に生えている常緑の高木(約10m)です。庭や公園によく植えられています。雄の木と雌の木があります。
 幹は真っ直ぐに伸びあがっており、太い枝を分けています。幹の肌の色は、黒みがかった灰色です。枝には、長いだ円形で厚くかたいつやのある葉(10〜20cm)を短い柄(約2cm)で互生しています。葉の縁には、細かくとがったギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 5月頃、葉の脇にある短枝(たんし)が枝を分けて黄緑色の小さな花をたくさんつけていました(集散花序)。冬の間は、赤く熟した紅色の球形の実(径約7mm)が群がりついています。実の中には、半月状だ円形の白っぽい種(約5mm)が4粒ほど入っています。
 名前は、葉に傷をつけてあぶると黒くなるところが、似た性質をもっているヤシ科のバイタラの木になぞらえてつけられたものです。

 

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クロガネモチの実
<モチノキ科>
クロガネモチの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:大芝生の楽部側の縁
 東北南部より南の暖かい地域の山に生えている常緑の高木(約10m)です。雄の木と雌の木があります。
 赤紫色の長い柄(約2cm)のある葉(両端が細まりとがっているだ円形・6〜8cm)が赤紫の色の小枝に互生しています。葉の表は濃い緑色で裏は淡い緑色をしています。
 5〜6月頃、新しい枝の葉の脇に長い柄(約1cm)の先に淡い紫色の花(花径約4mm)の集まり(2〜6花ずつ・集散花序)を咲かせていました。秋から冬にかけて雌の木には、球形の真っ赤な実(径約8mm)をびっしりつけています。実の中には、灰黄色の半月形の種(約5mmで2本の縦溝が見られる)が6粒程入っています。
 名前は、枝や葉の柄の色が、黒がね色(昔鉄のことを黒がねといっていた)をしたモチノキということでつけられたようです。

 

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ユズリハの実
<ユズリハ科>
ユズリハの実
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:楽部入口の玄関前
 本州中・南部より西の地方の山に生えている常緑の高木(4〜15m)です。庭や公園によく植えられています。雄の木と雌の木があります。
 葉は枝の先に集まって互生しています。葉(15〜20cm)には、淡い紅色の長い柄があり、厚みのある細長いだ円形で、表は深緑色をしており、裏は白みがかった緑色をしています。
 新しい葉が出る4〜5月の頃、枝先の葉の脇に緑色の小さな花の集まり(総状花序・4〜8cm)をつけていました。秋から冬にかけて雌の木には黒紫色で白い粉をかぶっている実(径約8mm)の集まりが房のようについています。実の中には、灰褐色で表面がざらつく球形の種(約7mm)が1つ入っています。種の面にはふくらんだすじが4〜5本見られます。
 名前は、新しい葉が育つと古い葉が落ちて新しい葉に後を譲(ゆず)るように見えることから、新旧交代がスムースに行われることを意味してつけられたものです。

 

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ヤツデの花
<ウコギ科>
ヤツデの花
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:書陵部前の植え込み
 東北地方南部より西の地方の、海に近い山に生えている常緑の低木(約2.5m)です。
 幹は、根もとから数本立ちあがっており、太い枝がばらばらに伸び出ています。茎や枝先には、長い柄(15〜45cm)に支えられたつやのある大きな掌(てのひら)のような葉(直径20〜40cm)が、四方に向かって輪状に互生しています。葉の裂片は先のとがった長い卵状のだ円形で、縁にはギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 10〜1月頃、葉がついている枝先に、小さな花(花径約5mm)を球状につけた花の集まり(散形花序)を円すい状にたくさんつけます(円すい花序・約40cm)。花には、おしべとめしべがそろっている花(両性花)とおしべが目立つ雄花の両方が見られます。花には、花びらが5枚・おしべが5本・花柱が5本に分かれているめしべが見られます。
 名前は、掌状に裂けている葉の形からつけられましたが、8裂しているとは限りません。

 

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カンツバキの花
<ツバキ科>
カンツバキの花
撮影日:2011年1月4日  撮影場所:北桔橋門前の植え込み
 暖かい地域を好んで生える常緑の低木(0.5〜3m)です。サザンカの変わりもので、庭や公園・生け垣などによく植えられています。
 幹は低いところで枝分かれして、横に広がる性質があります。葉は、厚みがあり、先ともとがとがっただ円形(5〜6cm)で、縁には細かいギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 12〜3月頃まで、紅色で中くらいの大きさ(中輪=ちゅうりん・花径8〜9cm)の半八重の花を咲かせます。花には、淡い緑色のがく苞(ほう)が5〜7枚・紅色の花びらが15〜20枚・おしべ20本前後(花糸・葯=やく共に黄色)・花柱が3裂しているめしべ1本が見られます。
 名前は、冬にツバキに似た花を咲かせることからつけられたものと思われます。
 ※カンツバキの中には、高さが3〜5mになるタチカンツバキという種類もあります。葉も花もほとんどカンツバキと変わらないようです。

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