9月の東御苑大芝生周辺に見られた草木の花々の中から


「9月の東御苑大芝生周辺に見られた草木の花々の中から」

 今年は異常な猛暑が続きました。8月にご紹介したヤエキョウチクトウやムクゲの花はまだ元気で賑やかに咲き続けていますが、フヨウの大きな花が新しく加わって、明るさが増してきました。周辺に、目を凝らして見ると、トキンソウ・ザクロソウ・コツブキンエノコロなどの小柄で目立たない草や、ヌスビトハギ・コバギボウシ・アキノエノコログサ・ヒヨドリジョウゴなどの秋口を飾る草ぐさが見られて、目を楽しませてくれました。

撮影・解説:永井昭三

永井昭三先生にメッセージや質問などをお寄せください。
http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/


 

フヨウの花 コバギボウシの花 ヌスビトハギの花 トキンソウの花
フヨウの花 コバギボウシの花 ヌスビトハギの花 トキンソウの花
タカサブロウの花 ダンドボロギクの花 オオアレチノギクの花 クワクサの花
タカサブロウの花 ダンドボロギクの花 オオアレチノギクの花 クワクサの花
エノキグサの花 ザクロソウの花 ヒヨドリジョウゴの花 アキノエノコログサの穂
エノキグサの花 ザクロソウの花 ヒヨドリジョウゴの花 アキノエノコログサの穂
コツブキンエノコロの穂
コツブキンエノコロの穂



 





フヨウの花
<アオイ科>
フヨウの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:石室前の植え込み
 中国生まれの落葉低木(1〜3m)です。観賞用に庭や公園に植えられています。
 幹には、枝をたくさん分けて、長い柄(約10cm)のある葉(10〜20cm)を互生しています。葉は手のひら形で3〜7つの切れ込みがあり、縁には鈍いギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。枝にも葉にも毛(星状毛=せいじょうもう)が生えています。
 8〜9月にかけて、葉の脇から柄(5〜10cm)のある白〜淡い紅色の花(花径約10cm)を1花ずつ咲かせます。花は、朝開いて夕方にはしぼむ一日花です。花のもとには10枚の細い苞(ほう・2cm)があります。花には、鐘形の筒先が中ほどまで5裂しているがく(約2cmで毛が生えている)・花びら5枚(もとが互いにくっついている)・花糸が筒状になってめしべを囲んでいるたくさんのおしべ・柱頭が5裂しているめしべが見られます。
 名前は、中国名の「木芙蓉」からいただいたものです。

 

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コバギボウシの花
<ユリ科>
コバギボウシの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:中雀門跡の植え込み
 野原や山すそなどの湿り気の多いところに生えている多年草(30〜60cm)です。
 葉は、長い柄(10〜20cm)に支えられた、先のとがった長い卵形(10〜20cm)をしており、根元からたくさん生え出ています。葉の両面は共に深緑色をしており、葉の縁は波打っています。さらに、葉のすじ(葉脈)は、真ん中のすじ(主脈)をはさんで、両側にそれぞれ4〜5本ずつ平行に走っており、もとは柄の方に流れています。
 8〜9月頃、葉の集まりのあいだから細い茎(30〜60cm・2〜3枚の鞘=さや状の苞=ほうが見られる)を伸ばして、先の方に淡い紫色の花の集まりを一方向に垂れるように咲かせます(総状花序・15〜30花)。じょうご形の花には、紫色の花びら状のものが6枚(花被といい、がくにあたる外花被3枚と花びらにあたる内花被3枚)・おしべが6本・めしべ1本が見られます。
 名前は、オオバギボウシに対して小さいギボウシの意味でつけられたものです。

 

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ヌスビトハギの花
<マメ科>
ヌスビトハギの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:中雀門跡の植え込み
 野山の日当たりが比較的よい木かげに生えている多年草(約1m)です。
 茎は立ちあがって上の方で枝を分けています。葉は、先が細長くとがったひし形状卵形の小さな葉(小葉=しょうよう)3枚をつけた柄の長い複葉(3出複葉=さんしゅつふくよう)で、枝に互生しています。
 7〜9月頃、葉の脇から長い花の軸を伸ばして、淡い紅色と白色の混じった小さな花(蝶形花=ちょうけいか・花径3〜5cm)を、まばらにつけます(総状花序)。花には、筒先に浅い切れ込みのあるがく・形が違う花びら5枚(旗弁1・翼弁2・竜骨弁=舟弁2)おしべ10本(9本の花糸の下部がくっついている)・めしべ1本が見られます。
 名前は、実の形が、盗人(ぬすびと=泥棒=どろぼう)が音をたてないように歩く時の足跡に似ているところからつけられたものです。

 

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トキンソウの花
<キク科>
トキンソウの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:大芝生の中のクロマツの下
 庭や道ばたの踏みつけられることの多いところでも、湿り気さえあれば、地面にへばりつくようにして生えている一年草(広がっている広さは5〜20cm)です。
 地面に広げている茎はよく枝分かれして、地面をはったり斜めに枝先をあげたりしながら広がります。葉(約1cm)は厚く、へら状でくさび形をしていますが、先の方にはギザギザ(鋸歯=きょし)が3〜5個見られます。
 7〜9月頃、葉の脇に球形で黄緑色をした花の集まり(頭花=とうか・3〜4mm)をつけています。頭花の外側は、長いだ円形の小さな総苞(そうほう)が囲んでおり、内側には、管状の花(管状花=かんじょうか・雌花と両性花が見られる)がつまっています。
 名前は、漢字で書くと「吐金草=ときんそう」で、実ができている頭花をつぶすと、黄色(金色)の種が吐き出されるように出てくるところからつけられたものです。

 

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タカサブロウの花
<キク科>
タカサブロウの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:天守台下の便所脇の植え込み
 道ばたや田のあぜ道などの湿り気の多いところによく生えている一年草(10〜60cm)です。
 茎は斜めに立ち上がっていますが、枝は葉の脇から対生するように出ています。葉も茎や枝に対生しています。茎にも葉にも短くかたい毛が生えているので、さわるとざらざらします。
 7〜9月頃、茎の先に平らで縁が白く見える花の集まり(頭状花=頭花・花径約1cm)をちらほらつけます。頭花は、長い柄(2〜4cm)に支えられており、先のとがった細長いだ円形の緑の総苞(そうほう)に囲まれております。総苞の内側には白い舌状花(ぜつじょうか・めしべだけがある)がほぼ2列に並んでいます。その内側には淡い黄緑色の管状の花(管状花=かんじょうか・先が4裂しておりめしべもおしべもある)がつまっています。
 名前の由来は、よくわかりません。

 

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ダンドボロギクの花
<キク科>
ダンドボロギクの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:休憩所脇の植え込み
 北アメリカ生まれの一年草(0.5〜1.5m)です。1933年(昭和8年)に愛知県の段戸山(だんどやま)で発見されていましたが、戦後急に広がりました。
 茎は、真っ直ぐに伸びあがり、細長いだ円状の葉(15〜20cm)をたくさん互生しています。葉の縁には、大小ふぞろいのギザギザ(鋸歯=きょし)があります。
 9〜10月頃、茎の上の方で枝を分けて、黄緑色の花の集まり(頭状花=頭花・長さ2〜3cm・花径約1cm)の集まりをたくさんつけます(散房花序)。頭花には、細長く淡い緑色の総苞(そうほう)に包まれています。総苞の内側には、淡い黄緑色で管状の小さな花(管状花=かんじょうか)がたくさんつまっています。
 名前は、初めて見つけられた愛知県の段戸山にちなんでつけられたものです。ボロギクのボロは、汚れた白色の冠毛の様子からつけられました。

 

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オオアレチノギクの花
<キク科>
オオアレチノギクの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:富士見多聞前
 道ばたや庭の草地によく生えている南アメリカ生まれの越年草(1〜1.5m)です。大正の終わり頃(1920年前後)日本に入ってきました。茎は真っ直ぐに伸びあがっており、少し厚みのある葉を互生させています。茎にも葉にも柔らかい毛が生えているので、さわってみると、はだざわりがよく、気持ちよく感じます。
 8〜10月頃、茎の上の方で枝を分けてくすんだ白色の花の集まり(頭状花=頭花)をたくさんつけます(円すい花序)。頭花は、外側が細長い緑色の総苞(そうほう)に包まれており、その内側に舌状花(ぜつじょうか)が2〜3列(舌状の部分が短いので総苞の外からは見えない)・その内側に管状の小さな花(管状花=かんじょうか)がつまっています。舌状花にも管状花にも花びらのもとに淡い褐色の毛(冠毛=かんもう)が見られます。
 名前は、アレチノギクより大柄なアレチノギクという意味でつけられたものです。

 

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クワクサの花
<クワ科>
クワクサの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:竹林前の草地
 野原や道ばたの草地に普通に見られる一年草(30〜40cm)です。
 茎には細かい毛が生えており、まばらに枝を分けて、クワの葉のような形(先のとがった卵形で、柄に近い方の縁は真っ直ぐに切れた形、または耳たぶのような形をしている)の葉(5〜8cm)を互生させています。葉は薄く、葉の両面には毛が生えていてざらざらしています。また、葉の縁には鈍いギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。
 8〜10月頃、葉の脇から出た柄の先に緑色の花の集まり(集散花序)をつけています。この中には、雄花と雌花が混じっています。花にはがくが4枚ありますが、花びらはありません。雄花にはおしべが4本見られ、雌花には円い子房からの伸びた紫色の花柱が見られます。
 名前は、葉の形がクワの葉に似ているところからつけられたものです。

 

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エノキグサの花
<トウダイグサ科>
エノキグサの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:休憩所前の植え込み
 道ばたや畑に普通に見られる一年草(20〜45cm)です。
 細い茎を真っ直ぐに伸ばして、たくさんの枝を分け、エノキの葉に似た先が細まった卵形の葉(先の方3分の2ほどのところにギザギザ=鋸歯=きょしがある)を互生させています。茎にも葉にもまばらに毛が生えています。
 8〜11月頃、葉の脇から枝(1〜2cm)を伸ばし、先の方に褐色の雄花を穂状につけた短い穂をつけ、その下に葉のようなもの(苞葉=ほうよう)を広げて、雌花を数花つけています。雄花の穂には、4裂したがくと8本のおしべを備えた雄花がたくさんついています。雌花には、3裂したがくと3本の花柱(先が細く裂けている)をもつめしべが見られます。
 名前は、葉がエノキの葉に似ているところからつけられたものです。別の名をアミガサソウとも言いますが、苞葉が編み笠に似ているところからつけられたものです。

 

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ザクロソウの花
<ザクロソウ科>
ザクロソウの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:大芝生の中のクロマツの下
 道ばたのヘリの草地によく見られる一年草(10〜20cm)です。
 茎は、細くて角張っています。根もとから枝を分けて、両端がとがった細長いだ円形の葉(1.5〜3cm)をつけています。上の方の葉は2枚ずつ対生していますが、下の方の葉は3〜5枚が輪状についています。茎も葉も緑褐色をしています。
 7〜10月頃、茎の先に極めて細い花の柄を分け出させて、黄褐色の細かい花をまばらにつけています(集散花序)。花には、黄褐色のがくが5枚(花びらはない)・おしべが3〜5本・花柱が3本あるめしべが見られます。花が終わると、ほぼ球形の小さな実(径約2mm)をつけますが、実の中には、濃い褐色の腎臓形をした種(約0.5mm)が見られます。
 名前は、葉の形の感じが大きな木の実をつけるザクロの葉に似ているところからつけられたようです。

 

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ヒヨドリジョウゴの花
<ナス科>
ヒヨドリジョウゴの花
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:富士見多聞前
 野原や林の縁によく生えている多年草(約2m)です。
 茎はつるのように伸びて、葉の柄で周りのものにからまりながら伸びます。葉(3〜8cm)は、先がとがった卵形で、もとの方に3〜5片の深い切れ込みが見られる葉を混ぜながら、つるに互生しています。つるにも葉にも柔らかい毛(腺毛=せんもう)が生えています。
 8〜10月頃、花のつく枝を葉に対生させたり、つるの途中から伸ばしたりしながら、小枝を分けて、白い花(花径約2cm)を咲かせます(集散花序)。花には、筒先が浅く5裂した緑色のがく・深く5裂している白い花びら(開いた花びらは後ろにひっくり返っており、裂片のもとに緑の斑点=はんてんが見られる)・おしべ5本(細長い葯=やくがめしべを取り巻いている)・めしべ1本が見られます。花の後には、赤く熟れる実がなります。
 名前は、ヒヨドリが赤い実を好んで食べることからつけられました。

 

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アキノエノコログサの穂
<イネ科>
アキノエノコログサの穂
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:富士見多聞前
 道ばたや土手などの草地によく見られる一年草(0.5〜1m)です。
 茎(幹=かん)は、根もとで枝を分けて株をつくっています。葉(幅0.8〜2cm・長さ10〜30cm)は、互生しています。上の面は白みがかった緑色をしており、まばらに毛も生えています(まれに無毛)が、下の面はつやがあります。葉のもとは細まりながら長い鞘=さや(葉鞘=ようしょう)になって茎を包んでおり、葉鞘の縁には毛が生えています。
 9〜11月頃、幹の先に、円柱状の長い穂(5〜10cm)をつけます。穂は、淡い緑色で、穂先が垂れているのが特徴です(エノコログサは立っているのが多い)。穂の軸には、淡い緑色の粒状のもの(小穂=しょうすい・約3mm)とそのもとに生えている長い毛(剛毛=ごうもう・小穂の2〜5倍の長さ)をすきまなくつけています。
 名前は、秋の頃穂を出すエノコログサという意味でつけられたものです。

 

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コツブキンエノコロの穂
<イネ科>
コツブキンエノコロの穂
撮影日:2010年9月1日  撮影場所:大芝生の中のクロマツの下
 熱帯アメリカ生まれの一年草(10〜40cm)です。芝地によく見られます。
 茎(幹=かん)は根もとで株を分けて、放射状に斜め上に立ちあがっており、根もとの幹は紫色をしていますが、上の方の幹は淡い緑色をしています。幹には、先のとがった細長い葉(長さ5〜12cm・幅約5mm)を互生しています。葉のもとは鞘=さや(葉鞘=ようしょう)になって幹をおおっています。
 8〜10月頃、幹の先に淡い緑色で円柱状の細長い穂(長さ1.5〜4cm・幅5〜6mm)をつけます。穂には、淡い黄緑色で粒状のもの(小穂=しょうすい・約2.5mm)がびっしり穂状についており、小穂のもとには、白色のかたい毛(剛毛=ごうもう)が見られます。
 名前は、キンエノコロに似ていますが、穂や小穂がキンエノコロより小柄なところからつけられたものかと思われます。

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