6月の東御苑大芝生周辺に見られた草木の花々の中から


「6月の東御苑大芝生周辺に見られた草木の花々の中から」

 サンショウバラの薄紅色の花が瞬く間に終わり、サツキの花が大芝生の周りを美しく飾っていました。ひときわ目立っているのは、茶畑の脇にあるヤマボウシの白い花のかたまりでした。
 中雀門跡(ちゅうじゃくもんあと)に見られたバイカウツギの花が終わって、後を追うように今は、ウツギやネジキの白い花が、枝いっぱいに花をつけていました。
 ハマナシの紅色がバラ園に美しく、タイサンボクの大杯を思わせる清楚な白花が頭上に映えていました。木々の下には、ユキノシタやドクダミの花々の姿を広げていました。ヒメシャラやナツツバキの開花が待たれます。
 6月初めに見られた草木の花々の中から12種をご紹介いたします。

撮影・解説:永井昭三

永井昭三先生にメッセージや質問などをお寄せください。
http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/


 

ウツギの花 アジサイの花 ウメモドキの花 ネジキの花
ウツギの花 アジサイの花 ウメモドキの花 ネジキの花
ベニバナカルミヤの花 ヤマボウシの花 タイサンボクの花 ハマナシの花
ベニバナカルミヤの花 ヤマボウシの花 タイサンボクの花 ハマナシの花
コヒルガオの花 ヒルガオの花 ドクダミの花 ユキノシタの花
コヒルガオの花 ヒルガオの花 ドクダミの花 ユキノシタの花



 





ウツギの花
<ユキノシタ科>
ウツギの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:中雀門跡
 日本各地の日当たりのよい野山に普通に見られる落葉低木(1.5〜3m)です。
 根元から、数本の茎を伸ばしており、樹皮が薄くはがれているのが目立ちます。枝には、短い柄(2〜5mm)のついた葉(先がとがった細長い卵形)を対生しています。葉の縁には先のとがった浅いギザギザ(鋸歯=きょし)があります。葉の両面には、かたい毛(星状毛=せいじょうもう)が生えているのでざらつきます。 5〜6月頃、枝先に短い柄のある白い花(花径約1.5cm)の集まり(円錐花序)をつけます。花には、短い鐘形のがく筒の先が5裂しているがく片(卵状の三角形で約2.5mm)・白い花びら5枚(1〜1.2cm)・おしべ10本(葯=やくを支える花糸にとがった歯のようなもの=翼=よくがある)・花柱が3〜4本あるめしべが見られます。
 名前は、幹や枝の中が空で管状になっているので、空木(うつぎ)とつけられました。

 

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アジサイの花
<ユキノシタ科>
アジサイの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:石室脇
 ガクアジサイをもとにして日本で生み出された園芸種の落葉低木(1〜2m)です。観賞用によく栽培されています。
 根元から灰褐色の茎がたくさん生え出していて、太い緑色の枝を分けています。枝には、先のとがった卵形の厚く大きな葉(8〜20cm)を対生しています。葉は両面とも濃い緑色でつやがあり、縁には三角状の大きなギザギザ(鋸歯=きょし)が見られます。
 6〜8月にかけて、枝先に球状の大きな花の集まり(散房花序・径約15cm)をつけます。花のほとんどが、ガクアジサイに見られるような飾り花(花径約1.5cm)です。花には、花びら状のがく片4〜5枚(緑色→紫色→紅色と色が変わる)・ごく小さな花びら4〜5枚・退化したおしべ約10本・花柱が2〜3本ある退化しためしべが見られます。
 名前は、青い花がかたまって咲く様子を表しています。

 

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ウメモドキの花
<モチノキ科>
ウメモドキの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:中雀門跡
 山の中の湿り気の多いところに生えている落葉低木(2〜5m)です。雄の木と雌の木があります。赤い実を観賞するために、庭や公園によく植えられています。
 幹は、根元から株を分けて数本生えあがっていますが、1本立ちのものもあります。葉は、両端が細くなっているだ円形で、両面には毛が生えています。また、葉の縁には、先のとがった低いギザギザ(鋸歯=きょし)がたくさん見られます。
 6〜7月頃、今年伸びた枝の葉の脇に、雄の木では7〜15花、雌の木では1〜7花の淡い紫色の小さい花(花径約5mm・雄花の方が小さい)の集まり(集散花序)をつけます。花には、お椀(わん)状のがく筒の先が5裂したがく片・淡い紫色の花びら5枚(だ円形)・おしべ4本(雌花では小さい)・とっくり形のめしべ(雄花では小さい)が見られます。
 名前は、冬に見られる実の様子が紅梅のつぼみに見えるところからつけられたようです。

 

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ネジキの花
<ツツジ科>
ネジキの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:中雀門跡
 岩手県より西の地方の野山の日当たりのよいところに生えている落葉小高木(約5m)です。
 幹には、縦に割れたすじがたくさん見られますが、このすじが少しねじれています。枝には、柄(約1.5cm)のある葉(6〜10cm・先のとがっただ円形)を互生しています。葉先は少しねじれており、葉の裏の真ん中のすじ(主脈)にそって、白い毛が生えています。
 5〜6月頃、前の年に出た枝の葉の脇から白いつぼ形の花(花径約3mm・長さ約8mm)を10花ばかりつり下げた花の集まり(総状花序・3〜6cm)をつけます(花軸の花の柄のつけ根には小さな葉=苞=ほうがある)。花には、5裂したがく片・長いつぼ形の白い花びら(毛が生えており、先が浅く5裂している)・おしべ10本(葯=やくの下部に2つの突起があり、花糸には毛が生えている)・めしべ1本(子房にわずかに毛がある)が見られます。
 名前は、幹の縦すじの割れ目にねじれが見られるところからつけられたものです。

 

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ベニバナカルミヤの花
<ツツジ科>
ベニバナカルミヤの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:本丸休憩所トイレ裏
 アメリカ東部生まれの日当たりがよく水はけのよいところに生えている常緑の低木(1〜3m)です。昭和の初め頃に入ってきた園芸植物です。
 枝先に、厚みのある両端がとがった長いだ円形の葉(7〜10cm)を、輪生状にたくさん互生しています。葉の表は濃い緑色ですが、裏は淡い緑色をしています。
 5〜6月頃、枝先に長い柄に支えられたパラソル形の淡い紅色の花(花径約2cm)の集まり(集散花序)をつけます。花のつぼみは、紅色の金平糖のような形をしています。花には、星形に5〜6裂しているがく・パラソル形に開いている紅色の花びら(内側に紅色の斑点が並んで見られる)・おしべ10本・めしべ1本が見られます。
 和名では、カルミヤの仲間をアメリカ生まれのシャクナゲという意味でアメリカシャクナゲといいますが、その中の紅色の花が咲く種類です。

 

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ヤマボウシの花
<ミズキ科>
ヤマボウシの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:富士見多聞茶畑脇
 野山の比較的湿り気の多いところに生えている落葉高木(3〜10m)です。
 真っ直ぐに伸びている暗褐色の幹はよく枝を広げています。枝には、先が鋭くとがっただ円形の葉を対生させています。葉の縁は少し波打っており、葉のすじ(葉脈)は先の方に向かって丸みを帯びています。葉の裏の葉脈の脇には、黄褐色の毛が目立ちます。
 5〜6月にかけて、昨年伸びた枝先に花の柄(5〜10cm)を伸ばして、その先に白い花びらに見える4枚の総苞(そうほう)を開き、総苞に囲まれた球状の花の集まり(頭状花序)をつけます。花には、花びら4枚・おしべ4本・めしべ1本が見られます。この花の集まりは、やがて球形の橙色(だいだいいろ)の実になり、食べらます。
 名前は、真ん中の花序をお坊さんの頭に、4枚の総苞をお坊さんの頭巾(ずきん)に見立ててつけたものと思われます。

 

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タイサンボクの花
<モクレン科>
タイサンボクの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:本丸大芝生(大奥跡)
 北アメリカ南部生まれの常緑の高木(15〜20m)です。日本には明治の初め頃入ってきて、公園などに植えられるようになりました。
 大柄で厚くかたい葉は、表はつやのある緑色をしていますが、裏は鉄さび色の毛におおわれています。葉の左右の縁は少し裏の方へ反っています。
 6月頃、枝先に一花ずつよい匂いのする大きな白い花(花径10〜15cm)を咲かせます。2〜3cmの花の柄に支えられて、花には、花びらのような白いがく片が3枚・白い花びらが6枚(がくと花びらの区別はつけにくい)に囲まれて、花の軸の周囲に集まっているおしべの集まりとめしべの集まりが見られます。
 名前は、花や葉が大きいのを褒めたたえてつけられたものです。また、花の形が大きな盃(さかずき)に似ているということから、大盃木=タイサンボクといっている人もいます。

 

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ハマナシの花
<バラ科>
ハマナシの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:富士見多聞バラ園
 主に北国や日本海側の海辺の砂浜に生えている落葉低木(1〜1.5m)です。観賞用にも庭や公園などに植えられています。
 幹や枝には、細い刺や、太くて平たい刺(とげ)が見られます。枝には、つややかな深いしわのあるだ円形の小さい葉=小葉(2〜3cm・縁にはギザギザ=鋸歯=きょしがあり、葉の裏面には腺点=せんてんがある)を7〜9枚つけた複葉(奇数羽状複葉)を互生させています。複葉の柄のつけ根には、1対の曲がった刺や膜状の小さな葉(托葉=たくよう)も見られます。
 5〜6月頃、枝先に紅色(白色の種類もある)の花(花径6〜10cm)1〜3花を開きます。花には、球形のがく筒と細長く伸びた緑色のがく片5枚・深紅紫色の大きな花びら5枚・黄色いおしべ多数・円く盛りあがっためしべが見られます。
 名前は、実をナシの実になぞらえ、浜にできるナシという意味でつけたものです。

 

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コヒルガオの花
<ヒルガオ科>
コヒルガオの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:本丸休憩所付近
 日本全土の野原や道ばたに普通に見られるつる性の多年草です。似たものに、ヒルガオがありますが、全体的にこちらはやや小柄です。
 地中をはっている茎からつる性の茎を伸ばして周りのものにからまりながら伸びています。つるには、長い柄のある三角状で基部が左右に耳形に張り出している葉(4〜6cm)を互生させています。基部の耳形の先は多くは2裂しています。
 6〜8月頃、葉の脇に花の柄を出して、薄いピンク色のラッパ形の花(花径約4cm・ヒルガオより小さい)を咲かせます。花の柄の上端には縮れた狭いギザギザ(翼)があります。花には、2枚の緑色の苞=ほう(約1.3cm)が2枚・淡い緑色のがく片(約8mm)が5枚・筒形の花びら・おしべ5本・めしべ1本(花柱の先が2裂している)が見られます。
 名前は、ヒルガオより小柄であるところからつけられたものです。

 

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ヒルガオの花
<ヒルガオ科>
ヒルガオの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:本丸休憩所付近
 日本全土の野原や道ばたに普通に見られるつる性の多年草です。似たものに、コヒルガオがありますが、全体的にこちらがやや大柄です。
 つるには、細長いだ円形で、葉のもとが二またに分かれた耳形で、先が細まりながら下の方へ張り出している葉(5〜10cm)を互生しています。
 6〜8月頃、葉の脇に花の柄を伸ばして、ラッパ形で淡いピンク色の花(花径約6cm)を開きます。コヒルガオの花柄の上端に見られたようなギザギザ=翼はありません。花のもとには2枚の大きな緑色の苞=ほう(約1.7cm)があります。花には、淡い緑色のがく片(1.1cm)が5枚・筒形の花びら・おしべ5本・めしべ1本(花柱の先が2裂している)が見られます。
 名前は、朝の間だけ花を開いているアサガオに対して、昼の間でも花を開いている種類ということで、名づけられました。

 

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ドクダミの花
<ドクダミ科>
ドクダミの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:中雀門跡の草地
 日かげや湿地によく生えている多年草(約30cm)です。地下の白い根茎で増えます。
黒みがかった紫色の茎から枝を分け、暗い紫緑色でハート形をした葉(約5cm)をまばらに互生しています。葉のもとには、小さな葉(托葉=たくよう)が見られます。
 6〜7月頃、茎の先の方の葉に向き合うように太い柄を伸ばして白い花びら状のものが目立つ花穂をつけます。白い花びら状のものは苞で、3枚以上ある場合は総苞(そうほう)といっています。ドクダミでは、4枚の総苞片を十字形(苞の長さ約1.5cm)につけ、その上に淡い黄色の塔のような花の集まり(穂状花序=すいじょうかじょ・約2.5cm)をつけています。花には、がくも花びらもなく、おしべ3本・花柱が3本あるめしべが見られます。
 名前は、「毒痛み」からドクダミになりました。毒にも痛みにも効くという意味です。他に、10種類の病気に効き目があるという意味のジュウヤクという名もあります。

 

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ユキノシタの花
<ユキノシタ科>
ユキノシタの花
撮影日:2010年6月2日  撮影場所:中雀門跡の草地
 中国から入ってきた半常緑の多年草(30〜40cm)です。日かげで湿り気の多いところによく生えています。
 茎や葉に長い毛が生えており、地上をはう紅紫色の糸のように細い枝を伸ばしながら増えます。根元から長い柄のある葉を周りに広げています。円い葉の縁には、浅いギザギザ(鋸歯=きょし)があり、暗い緑色の地に灰白色のすじが目立ちます。葉の裏は濃い紫色です。
 5〜7月頃、根元の葉の間から長い花茎(20〜40cm)を伸ばして、上の方に白い花の集まりをまばらにつけます(円錐花序)。花には、星形に深く5裂しているがく(毛が目立つ)・花びら5枚(上の3枚は小さくピンク色の地に紅色の斑点があり、下の2枚は白く大きい)・おしべ10本・花柱が2本あるめしべが見られます。
 名前は、雪の中でも耐えて冬越しをするところからつけられたものと考えられます。

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