自然と友だち


「4月の東御苑大芝生周辺に見られた草木の花々の中から」

 アマギヨシノが白い花を樹冠いっぱいに咲かせています。それを追うように、淡いピンクのソメイヨシノが花を開き始めました。コブシが終わり、タムシバも盛りを過ぎて、今は黄色のシナレンギョウと花桃の花が桃華楽堂周辺を飾っています。
 大手休憩所近くの芝地にはニワウメやニワザクラが、富士見櫓脇の林地にはアミガサユリやイカリソウ、ニワトコなどの花々も見られます。これから、春の草木の花が次々に姿を現していくことでしょう。今回は、4月1日に見られた花の中から、10花を取りあげてご紹介します。

撮影・解説:永井昭三

永井昭三先生にメッセージや質問などをお寄せください。
http://www3.jsf.or.jp/mlmaster/


 

アマギヨシノの花 ソメイヨシノの花 シダレザクラの花 ニワウメの花とニワザクラの花
アマギヨシノの花 ソメイヨシノの花 シダレザクラの花 ニワウメの花とニワザクラの花
フッキソウの花 シナレンギョウの花 ミヤマシキミの花 アカボシシャクナゲの花
フッキソウの花 シナレンギョウの花 ミヤマシキミの花 アカボシシャクナゲの花
ニワトコの花 アミガサユリの花
ニワトコの花 アミガサユリの花



 





アマギヨシノの花
<バラ科>
アマギヨシノの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 ソメイヨシノの発生の起源を研究するために、オオシマザクラ(♀)とエドヒガン(♂)をかけ合わせる実験をしている時に出てきたといわれている雑種で、落葉高木(8m以上)です。
 3月中旬から4月上旬にかけて、大輪の白い花(花径約4cm)を3〜5花ずつ咲かせます(散房花序)。花には、筒状で上の方が少しくびれている長い壷(つぼ)形のがく筒(約8mm)と、その先が5裂しているがく裂片(約8mmで、先がとがった長いだ円形をしていて、縁には深い切れ込みのあるギザギザ=鋸歯=きょしがある)、白く丸みのある花びら5枚(約2.5cm)、おしべ多数(約25本)、めしべ1本(淡い緑色で、花柱の下の方に毛が生えている)が見られます。花が終わりに近づくにつれて花びらは次第に赤みをおびてきます。

 

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ソメイヨシノの花
<バラ科>
ソメイヨシノの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 エドヒガンとオオシマザクラの雑種といわれている落葉高木(8〜15m)です。
 今年は昨年より1週間ほど早く咲き始めました。花は、短い柄(花柄、約1cmで毛が生えている)の先に約3本の花の柄(小花柄、約2cmで毛が生えている)を伸ばして、その先に花(花径約3cm)を開いています。花には、筒状で上の方が少しくびれている長い壷(つぼ)形のがく筒(約8mm)と、その先が5裂したがく片(約5mm、三角状の長いだ円形で縁にギザギザ=鋸歯があり、がく筒と共に毛が生えている)、淡い紅色を含んだ白色の花びら5枚(約1.5cm)、おしべ多数(約25本)、めしべ1本(花柱の下の方に毛が生えている)が見られます。
 名前は、江戸の染井(現在の豊島区)から全国に広がったサクラで、ヨシノザクラ(ヤマザクラ)と区別するためにつけられたものです。

 

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シダレザクラの花
<バラ科>
シダレザクラの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 エドヒガンの栽培品種で、大木になる落葉低木(8m以上)です。
 細い枝が、垂直にしだれます(写真の木は剪定=せんていしてあるのか枝が短いが…)。樹皮がエドヒガンと同じように、縦に裂けています。
 3月下旬ごろから、花の柄(小花柄、約1.4cmで斜め上向きの毛が生えている)2〜4本を散形状に伸ばして、薄紅色がかった白い花(花径約2cm)を咲かせます。花には、下部が少しふくらんだ壷(つぼ)形のがく筒と、その先が5裂したがく片(先が細まりながらとがっている長いだ円形で、がく筒と共に毛が生えている)、薄紅色がかった白い花びら5枚、おしべ多数(約15本)、めしべ1本(おしべより長く、花柱の下部に斜め上に向いた毛が生えている)が見られます。 名前は、枝が垂れさがっている様子からつけられたものです。イトザクラともいいます。

 

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ニワウメの花とニワザクラの花
<バラ科>
ニワウメの花とニワザクラの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
ニワウメの花中国から入ってきて観賞用に栽培されている落葉低木(約1.5m)です。
 3〜4月頃、細い枝の節々に、2〜4花ずつ薄紅色の花(花径約1.5cm)を咲かせます。花には、広い鐘形をしたがく筒の先が5〜7裂しているがく片(上半部にギザギザ=鋸歯がわずかにある)、薄紅色の花びら5〜6枚、おしべ10数本、めしべ1本(子房や花柱には毛が生えている)があります。
ニワザクラの花ニワウメと同じように中国から入ってきて、観賞用に栽培されている落葉低木(約1.5m)です。
 花の時期は、ニワウメより半月ほど遅れて咲き始め、枝の節々に1〜2花ずつ白色(淡い紅色もある)八重の花(花径約2cm)を咲かせます。花には、緑色でヒトデ形のがく、白色で八重の花びら多数が見られ、中ほどには緑に葉化した花びらも散見されます。

 

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フッキソウの花
<ツゲ科>
フッキソウの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 山の中の木々の下(半日陰を好む)に生えている、草のように見える常緑の小低木(20〜30cm)です。庭や公園にも植えられています。雄花と雌花があります。
 茎は緑色で群生しており、下の方では地表をはい、上は立ちあがっています。つややかでひし形をした葉の縁には、上半分に荒いギザギザ(鋸歯)が見られます。
 春から秋にかけて、茎の先に花穂(2〜4cm)をつけます。花穂の上の方には雄花をたくさんつけていますが、雌花は雄花の集まりのもとの方に数花見られます。雄花には4枚の白いがく片と4本の長いおしべが見られ、雌花には4枚のがくに囲まれた2本の花柱が見られます。花には花びらがなく、がくの下の方には数枚の苞(ほう)があります。
 名前は、木陰でも地面一杯に豊に茂る姿にちなんで、富貴草とつけられたようです。

 

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シナレンギョウの花
<モクセイ科>
シナレンギョウの花
撮影日:2010年3月31日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 中国生まれの落葉低木です(2〜3m)。庭や生垣に植えられています。
 茎は少し角張っていて立ちあがり、ほとんどたれません。茎を縦に切ってみると、薄い横板の仕切りが多く見られるのが特徴です。レンギョウの茎は、縦の仕切りしかありません。
 葉は、両端が細くなった長いだ円形(3.5〜11cm)で、先から中ほどまでには、鈍いギザギザ(鋸歯)があります。葉は枝に対生しています。
 4月頃、若葉と共に花が咲きます。濃い黄色の花(花径約2.5cm)が、一か所に1〜3花ずつついています。花には、先が深く4裂している淡い緑色のがく、先が4裂している黄色の花びら、2本の短いおしべ、おしべより長く淡い緑色のめしべ1本が見られます。
 名前は、中国(支那=しな)生まれのレンギョウという意味でつけられたものです。レンギョウの名前の由来はよくわかりません。

 

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ミヤマシキミの花
<ミカン科>
ミヤマシキミの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 福島県より南の暖かい地方の木陰に生えている常緑の低木(1〜1.5m)です。雄の木と雌の木があり、毒性をもっている植物です。
 茎から分かれている枝先近くに、細長いだ円形の厚い葉(4〜10cm)を輪生するように互生させています。葉を透かして見ると、油点という透き通った粒が散らばって見えます。
 3〜5月にかけて、枝先に花の軸(4〜8cm)を伸ばして、白い花の集まり(円錐花序)をつけます。細い柄に支えられた花には、緑色のがく片が4枚、白い花びらが4枚(裏側には油点が見られる)、おしべが4本(雌花のものは小さい)、めしべが1本(雄花のものは小さい)が見られます。秋、冬になると、雌の木の花の後には赤い実がなります。
 名前は、枝、葉の様子がシキミという木の枝葉に似ていて、山の日陰に生えているところからつけられたものです。

 

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アカボシシャクナゲの花
<ツツジ科>
アカボシシャクナゲの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 台湾中部以北に生えている常緑の低木です(約2m)。
 葉は、厚く、細長いだ円形(長さは約13cm、幅は約4cm)で、葉の表は濃い緑色ですが、裏は淡い緑色をしています。茎の先の方に集まって互生しています。
 花は3〜4月頃、枝の先に集まって、ろうと状鐘形で先が5裂した白っぽいピンク色の花(花径約6cm)を7〜10花つけます。蕾の時は濃いピンク色をしていますが、花を開くと白っぽくなります。花には、浅いピンクのがく筒の先が浅く5裂したがく片(約2ミリで毛が生えている)、筒状で先が5裂して開いている白っぽいピンクの花びら(上部内面に濃い紅紫色の斑点が目立つ)、長いおしべ10本、長いめしべ1本が見られます。
 名前は、正確な由来はわかりませんが、花の内面に赤っぽい斑点が目立つことからつけられたのではないかと思われます。

 

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ニワトコの花
<スイカズラ科>
ニワトコの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 野山に普通に見られる成長の早い大形の落葉低木(3〜5m)です。
 茎や枝の木の質が柔らかく、中心部には太くてスポンジのような髄(ずい)といわれるものが通っています。髄は、顕微鏡用の切片を作る時に検体をはさむ用に使われています。
 3〜4月頃、芽の中から葉と共に伸び出た枝先に淡い黄色がかった白い小さな花の集まりをたくさん咲かせます(散房花序=さんぼうかじょ)。花には、花筒の先が5つに割れた花びら(先が円い)、おしべ5本、めしべ1本(赤褐色をしている)が見られます。
 名前は、「接骨木」と書いてニワトコと読ませています。昔は、この木を煎(せん)じた汁を打ち身や脱臼(だっきゅう)の薬に使っていたことが、名前に関係しているようです。

 

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アミガサユリの花
<ユリ科>
アミガサユリの花
撮影日:2010年4月1日  撮影場所:東御苑大芝生周辺
 中国生まれの多年草(約60cm)です。球根を咳止めや熱さましなどの薬に利用するために植えたり、観賞用に植えたりしています。
 茎は淡い青緑色で、真っ直ぐに立っており、細長い葉(約10cm)を茎に3〜4枚ずつ何段にも輪生しています。茎の先の方の葉は、細く伸びて先はかぎ状に曲がっています。
 3〜5月頃、茎の先近くの葉の脇に、つり鐘形で淡い黄緑色の花(長さ2〜3cm)を、1花ずつ下向きに吊りさげるように開きます。花びら(がくと花びらが同じ姿をしているので花被=かひ)が6枚(外面は淡い黄緑色で緑のすじがあり、内面には紫色の網目の紋=もんがある)、おしべ6本、花柱の先が3裂している長いめしべ1本が見られます。
 名前は、花被の内面に網目のような模様が見られ、傘のような花が咲くところからつけられたものです。他に、バイモという名前もあります。

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